中村米吉さんの酒エピソード 父・歌六に連れられ祇園、宮川町、先斗町の花街へ

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中村米吉さん(歌舞伎役者/29歳)

 女形の若き歌舞伎役者として注目の中村米吉さんが来月、歌舞伎版の舞台「風の谷のナウシカ」でナウシカを演じる。父の5代目中村歌六に連れられての京都でのエピソードなど、歌舞伎役者ならではの酒席話を語ってくれた。

 ◇  ◇  ◇

 子供の頃は父が食事の時間に晩酌していた記憶があります。父は潰れるほど飲むこともなく飲み上手だと思いますよ。

 私はそんなにたくさんはいただかないのですが、地方に行くとやはり飲む機会が多いです。稽古と公演で1カ月間同じ街にいる期間は、20歳を過ぎると父に連れられて出かけていました。

 京都は古い街ですので父がお世話になっている方がたくさんいまして、花街のお店へ挨拶へ行くんです。祇園、宮川町、先斗町。父が「今日は○○に顔を出すよ」と。僕が「はい、行きます」と。

 小料理屋でもバーでもない、京都のああいう店をなんと形容したらいいのかわかりませんが、そこで父との付き合いが古い年配の方には「あんたのひいおじいさん(3代目中村時蔵)の舞台はよかったで」と言われることも。

■最初は梅酒のソーダ割り

 そこで飲まないわけにはいかないですから、ビールもお酒も苦手だった私は甘いお酒ばかり。梅酒のソーダ割りは好きで飲んでいました。でも京都のある店には置いてなくて、わざわざ梅酒を買っておいてくださった。近年もそのお店に行った際に「梅酒なら飲めるやろ」と用意してくれて。お気遣いしてくださってありがたいですが、もう9年たって今は日本酒や焼酎も飲めるんですけどね(笑)。

 いろんな土地でお酒をちょうだいして味を覚えるようになりました。四国の香川の通称、金毘羅さんに金丸座という古い芝居小屋でこんぴら歌舞伎をやる時は、宿が温泉街に限られますので、ホテルの店でファンの方に「さっきお芝居見てました」と話しかけられるのはしょっちゅう。お客さまが観光がてら芝居を見てくれて泊まってらっしゃる。だれが見てるかわからないから、飲み方も気をつけなきゃいけない(笑)。

 地方公演が1カ月以上あるのは京都の他に大阪、名古屋、博多。役者の滞在するホテルは京都なら南座の周辺、博多なら博多座に近い中洲のそば。飲みに行く店も限られますから、夜に先輩の役者さんと遭遇することも多いんです。

中村鴈治郎さん、片岡秀太郎さんの思い出

 京都で父に、僕と同世代の中村隼人をご飯と飲みに連れていってもらい、僕らが店を出たら中村鴈治郎兄さんがちょうどその店に向かって歩いてきて、僕らの肩をつかんでそのまま店に戻されたことも。店の人からは「お帰り!」と(笑)。

 先輩たちと飲むと緊張しながらも、芝居の話ができる。私の場合は「おまえ、芝居はもっとこうしなきゃ」とダメ出しや叱られたことが多かった。

 でも、それは楽屋で「おはようございます」と挨拶した時に言ってくれるようなことじゃなく、酒の場だからこそ言ってもらえるんです。

 逆に「この前のあの役、よかったよ」と褒められることも。若いうちは先輩に褒められると励みになりますでしょ。

 亡くなられた片岡秀太郎さん(片岡愛之助の養父)は私の大好きな大先輩でした。お客さまやお仲間と飲みに行かれる時に「あんた、何してるん。行こうか」と僕も誘ってくださることが多くて。お酒をあまりお飲みになられない方で、周りが水割りを飲んでいても、ホットコーヒーを飲んでらっしゃった。

 ある夜、秀太郎さんが牛乳にブランデーを入れて飲んでらした。そして私の方を見て「これ、あんたのおじいちゃん(2代目中村歌昇)に教わったんや」と。「貴智雄(本名)にいちゃんがな、『お酒飲めへんなら、こうやってちょっとだけ入れて飲んだらそれっぽく見えるし、ポーッとするし』」と。

 僕が生まれる前に死んでしまったので祖父のことは何も知らないから、昔のお話を聞けるのは貴重ですし、祖父を身近に感じられます。大先輩からそんなお話を伺えるのが、お酒の場のよさ。これからもお酒の力を借りて、先輩たちから芝居に生きるお話を聞きたい。

 来月は歌舞伎で「風の谷のナウシカ」の公演。3年前の初演で話題になり、今回は再演で僕が初めてナウシカを。自分でビックリしています。歌舞伎はあまり見たことがないけどナウシカだから見てみようという方のために、原作のナウシカに近づけるよう頑張りたいです。

▽本名:小川修平 1993年3月、東京都出身。5代目中村歌六の長男。2000年に5代目中村米吉を襲名して初舞台。11年から本格的に女形に。

■舞台情報
歌舞伎座「七月大歌舞伎」第3部「風の谷のナウシカ」7月4~29日(開演18時30分)出演:尾上菊之助、中村米吉ほか。

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