乳房再建に2つの選択肢 人工物or自家組織どちらが安全か
「人工物を体内に入れることで起こる避けようがない結果で、医師の腕とは関係ない部分がある。だから、人工物は入れたら完成で終わりではなく、メンテナンスしていく必要があります」
自家組織ならメンテナンスは不要。人工物より自家組織の方がいいと、素人目には感じる。しかし、がん拠点病院でも自家組織で乳房再建を積極的に行うところは少なく、人工物がほとんどだ。自家組織の手術は高い技術力を要し、手術にかかる手間も人工物より増えるからだ。
自家組織の乳房再建法には「皮弁法」と「脂肪移植」がある。
「皮弁法」は血流の保たれた状況で皮膚や脂肪を移植する。かつては筋肉ごと取っていたが、合併症が起こりやすい。そこで筋肉を取らずに残し、皮膚や脂肪に血液を運ぶ細い血管(穿通枝)も含めて皮膚と脂肪だけを採取し、移植する。結果、「温かく柔らかい乳房」が実現する。「穿通枝皮弁」と呼ばれる。
採取する皮膚や脂肪は下腹部からが一般的だが、佐武部長は患者の希望に合わせて部位を選び、下腹部、背部、太もも、でん部など13カ所から選択している。