乳房再建に2つの選択肢 人工物or自家組織どちらが安全か
「脂肪移植」は、下腹部や大腿部などから吸引した脂肪組織をパスタ状に細かく精製し、細い注射器の針につけて1本ずつ移植する。皮弁法は皮膚や脂肪を採取するのでその箇所に傷がつくが、脂肪移植では目立つ傷ができない。
■自家組織による再建にもリスクがある
皮弁法か脂肪移植かは、乳がんの手術状況や胸の形などさまざまな要素から適応が変わる。ただ、いずれにしろ、自家組織には人工物にはないリスクがある。
「皮弁法は、血管が詰まり脂肪が壊死する危険があります。すると、せっかく再建した乳房を抜去しなくてはならない。医師の経験数、技術力、医療機関の術後の管理能力が問われます」
脂肪移植でも、脂肪の壊死が問題になる。患者の胸の形などから、脂肪注入の量、回数をその都度変えなくてはならない。複数回する場合、佐武部長は半年ほどスパンを置くというから、脂肪移植を3回行うとすれば1年半かかる。また、脂肪移植は保険も適用されない。
「自家組織と人工物にはそれぞれのメリット、デメリットがある。乳房再建は全摘後すぐに受けなくても、時間が経ってからでも可能です。だから焦らず、まずはどういう乳房をつくりたいかをイメージし、主治医に伝えるべきです」