著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

英の専門誌に研究結果 柑橘類で認知症は予防できるのか?

公開日: 更新日:

 いくつかの実験的な研究では、柑橘類の摂取で認知症が予防できる可能性が示されています。とはいえ、人を対象にした研究では、柑橘類の摂取と認知症の関連について明確なことは分かっていませんでした。

 そんな中、柑橘類の摂取と認知症の発症リスクを検討した観察研究の結果が、英国の栄養学専門雑誌に2017年5月19日付で掲載されました。この研究は1万3373人の日本人を対象に、食品の摂取状況についてアンケート調査を行い、柑橘類の摂取状況と認知症発症の関連を検討しています。なお、結果に影響を与えうる年齢や性別、飲酒、喫煙状況などで統計的に補正して解析しています。

 5・7年間の追跡調査の結果、認知症発症リスクは、柑橘類の摂取頻度が「週に2回以下」の人に比べて、「週に3~4回」の人では8%、「ほぼ毎日摂取している」人では14%、低い傾向にありました。とはいえ、統計学的に有意な差とは言えず、結果はやや曖昧という印象です。

 ただし、研究開始から2年以内に認知症を発症した人を除外して解析したところ、認知症の発症リスクは、柑橘類の摂取頻度が「週に2回以下」の人に比べて、「週に3~4回」で18%、「ほぼ毎日」で23%、こちらは統計学的に有意に低下するという結果でした。このことから、この論文では、「柑橘類の摂取頻度が高いと、認知症発症リスクが低下する傾向にあるのではないか」と結論されています。

 この研究では、統計学的に明確な差が出なかったこともあり、柑橘類の認知症予防効果は現時点では不明という印象です。しかし、本研究は柑橘類と認知症の関連を検討した世界で初めての報告であり、今後の研究に注目したいところです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」