著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

心臓マッサージの重要性がさらに広まれば救える命は増える

公開日: 更新日:

 倒れた人の呼吸が止まっていて酸素を取り込めない状態だったとしても、血液中の酸素がゼロになることはありません。あきらめずに心臓マッサージを続けて血流を維持すれば、脳に血液を送って低酸素状態を避けられますし、心臓の壊死も回避できます。

 心臓マッサージを行ったことで倒れた人の命が救われたケースはたくさんあります。中でも、一番有名なケースは「世界一の救命都市」と言われるアメリカのシアトルです。シアトルでは、「バイスタンダーCPR」(救急現場に居合わせた人による心肺蘇生)が市民にも広く浸透しています。1960年ごろから心臓突然死に対する救命処置の取り組みが実施され、1970年ごろには世界初となるバイスタンダー育成専門組織が設立されました。

 その後、小学校から救命講習が教育され、市民の救命講習受講率は60%を超えています。これにより、シアトルでの救命率は年間平均40%前後と劇的にアップしました。日本の心肺停止に対する救命率は2~8%ですから、驚異的な数字です。それだけ、心臓マッサージは救命にとって重要なのです。

 しかし、心臓マッサージの重要性はそこまで広く一般的には浸透していない印象です。知っているのと知らないのとでは救命率に大きな差が出てきます。また、的確に行わないとほとんど効果がないといえます。致死性不整脈に有効なAED(自動体外式除細動器)の使い方も含め、いざというときのためにも消防局などが実施している救命講習を受けることをおすすめします。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」