【あさりとじゃがいものタイ風炒め物】ナンプラーの風味が塩分を補う

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 今回の旬の食材はあさり。あさりの旬はちょうど今ごろ、春先3月から4月である。それはあさりが初夏の産卵に備えて身の部分にしっかりと栄養を蓄積しはじめる時期が今だから。ぷっくりとした身が貝殻の中に目いっぱい詰まることになる。あさりにはオスとメスがあり、夏前、海水温がもう少し高くなるとそれぞれ卵子と精子を放出する。両者は水中で受精、あさりの赤ちゃんが生まれる。その前にいただいてしまうのだからまずは感謝が必要、資源の保護のための計画漁業も必要となる。

 日本の各地に貝塚遺跡が点在するとおり、縄文時代の昔から日本人はこの自然の恵みを利用してきた。あさりのもうひとつの面白さは貝殻模様の千差万別さ。これは遺伝子が決めているのではなく、あさりの個性による(貝殻成分と色素分泌の兼ね合い)。そしてあさり独特の海の風味はコハク酸による。化学的に見るとコハク酸はジカルボン酸という物質で、昆布だしのグルタミン酸と同じ仲間のうま味成分である。砂抜きの際、蜂蜜を数滴垂らしておくと、コハク酸がさらに合成されうま味が増す(コハク酸は糖から作られる)。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

▽松田美智子(まつだ・みちこ) 女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事」「調味料の効能と料理法」など。

この料理を「お店で出したい」という方は編集部(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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