著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

できる・できないを繰り返す「まだら認知症」の対応方法

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 まったく同じことなのにできるときとできないときがある――認知症の親に対して子どもがそんな戸惑いを抱くことは多い。たとえば午前中にはひとりですんなり着替えができたのに、午後になるとまったくできなくなったり、数時間前までスラスラと口にしていた人の名前や場所の名前を完全に忘れてしまったりする。

 こうした「まだら認知症」は認知症の種類を示すものではないが、脳血管性認知症と呼ばれるタイプの認知症によく見られる症状だ。この脳血管性認知症は、これまで述べてきたアルツハイマー型やレビー小体型の認知症と違い、脳梗塞、脳出血によって脳血管周辺の神経細胞がダメージを受けて発症する。この場合、脳の中にダメージを受けた箇所とそうでない場所があることや、刻々と変化する血流のメカニズムもあって、認知症状にバラツキが生じることになる。時間によって、同じことができたりできなかったりするのはそのためであり、これを繰り返すことになる。

 この症状の主な原因となる脳内の血管の梗塞や出血は、表面的にはすぐに日常生活の阻害要因となるとはかぎらない。実際には脳内で小さな梗塞や出血が繰り返し起こっていても、顕著な症状が表れないことが少なくない。だが小さな梗塞や出血が続いたり、年齢を重ねることで次第に症状が表れてくる。だから、まだら認知症が認められる場合には、臨床経験豊富な専門医の診断を仰ぎ、脳血管性認知症であるかどうかを調べてもらうことが大事だ。脳血管性認知症であれば、生きている神経細胞が元気なので多少のリハビリも可能だし、さらなる血管障害の発生を予防するための薬を服用したりすることで、症状の進行を抑えることも可能だ。また遠因としては、生活習慣病も考えられるから、その面での改善が症状の進行を抑える可能性もある。

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