著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「インフルエンザ流行」報道から考える臨床研究の全体像

公開日: 更新日:

 巷に流れるさまざまな情報を吟味する際に、まずその情報の背景にある研究のチェックが重要です。さらにはその研究が人間を対象にしたものであるかどうかをチェックし、さらにその研究が人間の細胞や器官の研究でなく、人間全体を取り扱った研究、つまり「臨床研究」かどうかを確かめるのが重要、というのがこれまでのまとめです。

 それでは、今回からはその「臨床研究」について詳しく見ていくことにしましょう。

 例えば、インフルエンザがどれほど流行しているのかを検討した研究を例に考えてみましょう。11月の初めに「今年は例年より1カ月早くインフルエンザの流行が始まった」とのニュースが流れましたが、この背景にあるのも臨床研究です。

 これは定点医療機関という受診した患者の感染症をチェックしている医院や病院からのインフルエンザの報告が、平均1施設1日当たり1人以上になった時点でインフルエンザの流行とするという定義に基づいて、「インフルエンザ流行」というニュースが流れるのです。

 このインフルエンザがこれくらい流行しているという研究は、何が起こっているかをただ観察し、記述した研究ということで、「観察研究」のひとつとして、特に「記述研究」と呼ばれます。「日本人の死因のデータ」「がん患者の10年後の生存率のデータ」などは、すべて「記述研究」の結果に基づくものです。

 あまり研究という感じがしないかもしれませんが、他の研究のもとになるデータを提供する面もあり、極めて重要な研究です。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも