著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

発症リスクのバロメーター「疲労」は脳梗塞の原因になる?

公開日: 更新日:

 疲労は心身にさまざまな影響を及ぼすと考えられますが、脳卒中を起こした人では、発症以前に疲労を感じていたと報告する人が多いそうです。しかし、疲労が脳卒中のリスクになり得るのかについて、詳しいことはよく分かっていませんでした。そんな中、米国心臓病協会と米国脳卒中協会が発行している医学誌「Stroke」の電子版に疲労と脳卒中の関連性を検討した研究論文が2020年3月4日付で掲載されました。

 この研究では、英国に在住している39~79歳の男女1万5654人が対象となっています。研究参加者に対してアンケート調査が実施され、疲労の度合いが評価されました。さらに、疲労のレベルに応じて研究参加者を4つのグループに分け、脳卒中リスクとの関連性を検討しています。なお、研究結果に影響しうる年齢、性別、血圧やコレステロールの値、喫煙・飲酒状況、野菜や果物の摂取などの因子について、統計的に補正を行い解析されています。

 平均で17・8年にわたる追跡調査中に、1509件脳卒中の発生が確認されました。解析の結果、最も疲労のレベルが低かった人に比べて、最も高かった人では、脳卒中のリスクが約1・5倍、統計的にも有意に増加することが示されています。脳卒中の中でも、脳内の血管が破れて発症する脳出血では疲労との関連性は示されませんでしたが、脳の血管が詰まって引き起こされる脳梗塞については、疲労レベルが最も高い人で1・59倍多いという結果でした。

 この結果から、疲労が直接的に脳卒中を引き起こしているのか、疲労を感じやすい生活環境が脳卒中の発症に関連しているのか明確には判別できません。とはいえ、疲労は将来的な健康リスクのバロメーターと考えてもよさそうです。

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