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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

“予言”を上回る超回復 池江選手の五輪と発症年齢の関係

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 その奇跡を現実にしたのは、池江さんの努力のたまものですが、医師からみて、その努力を可能にした大きな要因は、発症年齢だと思います。

 白血病は小児のがんの代表で、小中学生での発症も珍しくありません。もしもう少し早く、たとえば中学生くらいで発症していたら、移植前に必須の抗がん剤の影響を受けていたかもしれません。成長期に抗がん剤などを受けると、成長障害で低身長になることがあるのです。

 池江さんは18歳で発症し、早川さんの発症は20代。2人とも競技の中断を余儀なくされたとはいえ、体が出来上がっての発症だったのは、競技を続ける意味では不幸中の幸いだったかもしれません。

 ほかのがんはどうでしょうか。肺や肝臓を部分切除した場合は、残った部分が元の機能を補うように肥大して、回復することが多い。もちろんケース・バイ・ケースですが、たとえば30%切除したからといって、機能が3割減にならないのはそのため。大腸がんもそうで、人工肛門になっても、体力面での影響はほとんどありません。


 体力に影響があるのが何かというと、胃がん食道がんです。ソフトバンク球団の王貞治会長のように胃がんで胃を全摘したり、食道がんで胃を食道のかわりに使ったりすると、激ヤセします。小澤征爾さんは食道がんの手術後、「着られる服がなくなった」とこぼしたそうです。

 激ヤセの原因は、胃に備わっている食べたものをためてタイミングよく十二指腸、小腸へと送り出す機能が損なわれ、消化吸収が悪くなるため。こうなると、体力の低下が心配です。ちなみに、現役世代がこれらのがんになると、スーツの新調代に出費がかさむといわれています。

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