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山口建静岡県立静岡がんセンター総長

慶応義塾大学医学部卒。国立がんセンター(現・国立がん研究センター)に勤務。内分泌部、細胞増殖因子研究部の部長などを歴任。1999年、同センター研究所の副所長、宮内庁の御用掛を兼務。静岡県立静岡がんセンターの設立に携わり、2002年、初代総長に就任し、現在に至る。著書に「親ががんになったら読む本」(主婦の友社)など。

「高齢者のがん治療」知っておきたい16のポイント 静岡がんセンター山口建総長が解説

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がん検診は何歳まで受けるべき?

■高齢者のがんは若い人より進行が遅い?

 ケース・バイ・ケースです。がんが発生し、診断されるまで10~20年かかっています。高齢者で発見されるがんは、時間をかけてゆっくり育っているので比較的悪性度が低く、進行も遅いと言えるかもしれません。

 一方で、がんは遺伝子にできた傷が原因で起こるので、年を取るに従い、遺伝子の傷は多くなります。長い過程で重要な遺伝子に傷が生じれば、年齢には関係なく悪性度の高いがんが出現します。実際、高齢者であっても進行が速いケースをよく経験しています。

■がん検診は何歳まで受けるべき?

 現在、がん検診に年齢制限はありません。ただし、利益・不利益の考えに基づき、一定の年齢以上のがん検診は積極的に実施しなくてよいとする意見はあります。けれども、がん罹患者の4割が75歳以上であることを考えると、高齢者の検診を制限することは当面、考えにくいと思います。

■国が推奨するがん検診は、胃がん、子宮頚がん、肺がん乳がん大腸がん。高齢という「がんのリスクが高い世代」ではPETなどそれ以外のがんの検診も受けるべき?

 がん検診には、対策型検診と任意型検診があります。市町村や職場でのがん検診は対策型検診。受検者集団で当該がんの死亡率が低下する科学的根拠がある場合、公共政策として実施されます。高齢男性に多い前立腺がんの検診は、対策型検診として9割近くの市町村で実施されています。しかし、科学的根拠が不十分で、対策型検診としての実施には否定的な意見が大勢を占めています。

 任意型検診の代表は人間ドックで、受検者の希望に応じて実施されます。年齢に関係なく、受検者の希望によります。

 PETについては対策型検診に用いて良しとする科学的根拠はありません。当初全てのがんを発見できると喧伝されましたが、実際は消化管の早期がんには効果が弱く、全体で見てもがんの検出率は3割程度。他の検診と一緒に実施する必要があります。

■治療によっては家族の負担が増すことも?

 高齢者はがん治療に伴う体力の低下が著しく、入院中でも自宅でも、歩行中の転倒、ベッドからの転落などへの注意が必要です。薬剤の効果も不安定。常用していた強力な睡眠薬を入院や治療後に服用するとせん妄状態に陥りやすくなります。

 入院中、高齢者でなければ家族はお見舞いで済む場合でも、高齢者では、病院の要望に応じ、家族が付き添わなければならないこともあります。

 体力の低下から治療後、寝たきりや認知症になるリスクも高まります。退院後、帰宅しても、治療前のような生活ができなくなることもあります。

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