著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

「4」が気になる…末期がんで緩和病棟に入った男性の心境

公開日: 更新日:

■生きたがっている私がいる

 時計を見ると、夜9時44分! え! これは?? 気分も、行動も変わることはないが、4は死、9は苦に繋がる? よく分からないが、緩和病棟に入ってから特に4、死が気になる。

 自分が死ぬ時は4時なのか、そんなことどうでもよいことなのだが、数字の時計が良くない。ふと見ると、いつも4時だったり、44分だったり、そんなに私に4が纏わりつかないで欲しい。枕元の時計は、数字ではなく長針短針にすればよかったか。暇だから、こんなことばかり考えている。なにか、もっと良いことを思いつけばいいのに……。

 私のような末期がん患者が、いつ死んだって、この世の中、なにひとつ変わらないのだ。たとえ、悲しんでくれる人がいても、すぐに忘れられる。

 コロナウイルスが収まり、地球温暖化防止にめどが立って……せめて、ウクライナの戦争が終わってから死にたかった。でも、私はまだ死んでいない。また、今日のネット記事に「がん治療・新薬」とある。私には間に合わないけど、そこに眼が行く。生きたがっている私がいる。

 明日は明日の風が吹く、今晩は嫌いなナースではない。眠剤をもらって、このまま眠れそうだ。

  ◇ ◇ ◇ ◇ 

 患者の心は複雑なのです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー