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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「旅行」は健康寿命を延ばし、心臓の健康維持にも役立つ

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 コロナ禍がひとまず落ち着いたことで、今年の夏は久しぶりに旅行に出かけたという人も多いのではないでしょうか。近年、「旅行はさまざまな健康効果をもたらす」という研究結果がいくつも発表されていて、心臓の健康維持にとっても大きなプラスになります。

 米国で実施された研究によると、「6年に1回しか旅行をしない女性」と「年に2回以上旅行をする女性」を比較すると、年に2回以上旅行をする女性の方が心臓疾患の発生リスクが大幅に低いという結果が出ました。

 また、日本の研究でもさまざまな病気の予防につながることが分かっています。日本の研究施設が、「旅行前」「旅行中」「帰宅後」に、旅行者の血圧、ホルモン値、脳波などのデータを計測したところ、旅行者は、前日から幸福感や充実感が高まり、帰宅後2日目に最高値に達していました。これは「ピクニック効果」と呼ばれるもので、心臓にとって大敵となるストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を減らします。

 出発時には、心臓疾患の原因になる動脈硬化や老化を促進する活性酸素の量を低下させるうえ、活性酸素を取り除く酵素の増加も見られることが分かりました。ワクワクする気持ちが脳内3大幸せホルモンであるドーパミン・オキシトシン・セロトニンを適度に引き出すのでしょう。旅行中も、リラックス時に高くなる脳のα波が増え、コルチゾールの分泌をさらに低下させます。コルチゾールは血管を収縮させたり、血中ナトリウムを増加させる作用があり、血圧を急上昇させます。また、コルチゾール濃度が上がると、血糖値やコレステロールの数値が高くなります。つまり旅行は、高血圧、高血糖、高コレステロールという心臓疾患の代表的なリスク因子を減らす効果があるのです。

 ほかにも、旅行先では日常生活よりもたくさん歩くなど身体活動が増加します。それが血液循環を良好な状態に促すことにもつながります。普段、運動とはあまり縁がない人でも、旅行に行けば自然と体を動かす機会ができるのです。

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