認知症の親が子供っぽい言動や行動をするのはなぜなのか

公開日: 更新日:

 認知症の親が人形遊びに夢中になったり、ご飯を食べさせてとせがんでくる--。介護する家族からそういった相談を受ける機会が少なくありません。これは「退行」と呼ばれる現象で、子供のような行動や言動が現れるのが特徴です。たとえば、目に入ったものを触ろうとしたり、「おめめがかゆくなっちゃったのよ」など、言葉遣いにもしばしば変化が見られます。

 認知機能の低下から、思い通りにできないことが増えて徐々に自信が失われ、その現状に目を背けたくなり、本能的に「自分にはできません」と幼子のような態度や行動で示すようになるのです。

 当院を受診される認知症の患者さんで、診察時にかつての会社員時代の話をしてくれていましたが、認知症が進行するにつれ幼少期の思い出話をするようになりました。認知症になると短期記憶が難しくなる一方で、長期記憶は保たれます。そのため、幼少期の出来事は鮮明に覚えていて、認知症がさらに進行すると現在と昔の記憶が混同し、その記憶の中で生きるようになります。よくご家族から「認知症の親に『お母さん』と呼ばれて戸惑った」との声を耳にしますが、本人は昔の記憶の世界で暮らしているので、当然、お母さんも生きていると思っているのです。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  3. 3

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  4. 4

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  5. 5

    「高市早苗総裁」爆誕なら自民党は下野の可能性も…“党総裁=首相”とはならないワケ

  1. 6

    志村けんさん急逝から5年、更地になった豪邸の記憶…いしのようことの“逢瀬の日々”

  2. 7

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  3. 8

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  4. 9

    広陵野球部は“廃部”へ一直線…加害生徒が被害生徒側を名誉棄損で告訴の異常事態

  5. 10

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった