著者のコラム一覧
黒﨑弘正江戸川病院放射線科部長

江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

がんの「オリゴ転移」では放射線治療を“最期の手段”にしない

公開日: 更新日:

 前回は局所療法としての「手術」と「放射線治療」を比較しましたが、かつては遠隔転移が出た場合の局所療法は意味がないと考えられてきました。遠隔転移とは血行性転移ともいわれ、血流に乗ってがん細胞がほかの臓器に転移することを言います。有名なのは脳転移、肝臓転移、骨転移などです。

 近年、「オリゴ転移」という言葉が登場しました。オリゴとはギリシャ語で「少ない」という意味で、オリゴ転移とは少数個のがんの転移のことです。一般的には「5個以内の転移」を指します(実際には初診時に5個以内の場合と再発時に出てくる場合などで細分化されています)。

 この病態に対し、標準的な抗がん剤に「定位放射線治療」を加えたほうが予後が長くなることが知られています。また2023年12月には、「非小細胞肺がんと診断され、1ライン以上の全身療法を受けた結果、転移巣が5個以下になった人が次の治療を考える場合、標準治療に定位放射線治療を加えることで無増悪生存期間の延長が期待できる」と報告されました。

 私は、抗がん剤治療を受けて順調に効いている場合、どこかで放射線治療を加えるべきだと思っています。しかし、残念ながらいまだに「放射線治療は最後の手段でとっておくべきだ」という考え方のドクターがかなりいることは確かです。つい先日も、このタイミングで放射線治療行うべきだとアドバイスした患者さんが主治医のところに戻って相談すると、「放射線治療はあくまで最後の手段であり、取っておくべきだ」と反対された例を経験しました。

 抗がん剤で順調にがんが縮小していく際に「どこかで放射線治療のチャンスがあるかもしれない」という目で患者さんを見ているドクターが優れたがん治療医であると、私は思っています。

【連載】教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」