「復職支援」が作業療法士の重要な役割なのはなぜか
ただし、手が動かせるようになったからといってすぐに生活ができるわけではありません。次の段階でADL(日常生活動作)訓練が必要になります。
トイレ、洗面、入浴、着替え、調理、食事など、日常生活で行うさまざまな一連の動作を繰り返し、ひとりで行えるように訓練します。認知症でこうした日常生活動作を忘れてしまった患者さんに対しても、動作を思い出させて繰り返し行ってもらいます。楽しく思い出させるのが作業療法士の腕の見せどころです。その際、患者さんが行う作業工程をシンプルに整理して、できるだけ動作しやすくするのも作業療法士の仕事です。
また、病気やケガによる高次脳機能障害や認知症の患者さんは脳の一部が壊れてしまっているため、記憶力だけでなく、注意力、遂行力、修正力もだいぶ低下しています。それらを向上させるため、その患者さんが達成できるレベルの課題を与えて自信をつけてもらい、“できること”を増やしていくのも作業療法士の役割です。うまくいかない課題を訓練する療法士は患者さんに嫌われてしまい、患者さんが訓練を拒否するようになります。