アルツハイマー型とレビー小体型どちらも発症するケースも
記憶力低下より先にうつ症状、無気力、無表情が見られる
認知症の前段階を軽度認知障害(MCI)といいます。アルツハイマー型もレビー小体型もMCIの段階があります。
進行すると共通する部分が増えてくるものの、MCIの段階ではそれぞれの特徴が目立ちやすい傾向があります。
アルツハイマー型のMCIは、記憶力低下が中心です。以前よりも物忘れが増えたり、同じことを何回も聞いたり、新しいことを覚えづらくなったりします。仕事や家事のミスが増え、周囲の人も「これまでと少し違う。何か変」と感じるかもしれません。ただ、日常生活や仕事に支障が出るレベルではありません。
レビー小体型では、うつ症状、集中力や注意力の低下、アパシー(無気力・無関心)、パーキンソン症状などが、記憶力低下よりも先に見られることが珍しくありません。
パーキンソン症状とは、仮面様顔貌(顔の表情が乏しくなり、無表情に見える)、手足の震えや動作の緩慢さなどです。レビー小体型では、レビー小体という塊の形成・沈着が発症に関係していると述べました。パーキンソン病もレビー小体が関係しており、症状が似ているところがあるのです。
レビー小体型でMCIの段階から出てきやすい症状には、レム睡眠行動障害もあります。
私たちは就寝中、眠りが深いノンレム睡眠と、浅いレム睡眠を繰り返しています。レビー小体型では、レム睡眠の時に筋肉の弛緩が正常に行われないため、悪夢を見たり、夢の内容をそのまま行動に移してしまうことがあるのです。
MCIや、認知症の軽度の段階で、アミロイドPETの検査などでアミロイドβの蓄積が確認されれば、レカネマブもしくはドナネマブの新薬の投与の対象となります。レビー小体型だけの場合は、新薬の対象となりません。
前述した通り、アルツハイマー型とレビー小体型の2つに該当する患者さんがかなりいて、最初はアルツハイマー型もしくはレビー小体型と診断されても、途中でもう一方の認知症が診断名に加わることが珍しくありません。つまり、最初はレビー小体型と診断されても、もしかしたらアルツハイマー型が加わるかもしれませんので新薬が投与できるかもしれない可能性を考えると、早い段階でアミロイドPETの検査を受けておいた方がいいでしょう。
なお、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβに関しては、認知機能低下の症状が出る前から蓄積の有無を調べられる検査機器アミロイドPETがありますが、レビー小体に対しては同様の機器はまだありません。開発中ですので、将来的には、シヌクレインPET(※)のようなものが出てくるでしょう。現段階では、レビー小体は、SPECTという検査機器で調べることができます。
※シヌクレイン(タンパク質)のうち、α-シヌクレインが脳内で凝集し、やがてレビー小体型の発症に至る。