「レビー小体型認知症」は初期から多彩な症状が現れる
レビー小体はパーキンソン病の原因物質でもある
レビー小体型認知症の原因となるレビー小体は、α-シヌクレインというタンパク質が蓄積してできた塊。そしてこのレビー小体は、神経難病であるパーキンソン病の原因物質でもあります。
パーキンソン病では、脳内の黒質という部分にレビー小体が蓄積し、黒質の神経細胞が減少し、本来ここで作られる神経伝達物質ドーパミンの量が不足して発症します。ドーパミンが減ると神経伝達が滞り、運動の調節がうまくできなくなり、手足が動きにくくなったり、ふるえたり、顔の表情が乏しくなったりします。
レビー小体の蓄積が黒質にとどまらず、大脳皮質まで広がると、レビー小体型認知症として発症します。顕微鏡で見るとレビー小体型もパーキンソン病も同じ病変で、パーキンソン病で見られる症状は、レビー小体でも見られるようになります。すなわち、手足の動きにくさ、手のふるえ、顔の表情の乏しさです。最初、高齢うつ病を疑い、しかしパーキンソン病と同様の症状が見られることから、レビー小体型という診断に至ることもあります。
レビー小体型の最初の方に出てくる症状として、幻視・幻聴も挙げられます。
大事なものを「なくしてはいけないから」と、これまでと違う場所へしまったはいいが、肝心のしまい場所を忘れてしまうことは誰にでもあると思います。認知症でない人は、しまい場所を忘れたことを自覚し、どこにしまったか捜すでしょう。アルツハイマー型では、しまい場所を変えたことを忘れていますから、元のしまい場所を見て「盗まれた!」となってしまいがち。これを物盗られ妄想と呼びます。
レビー小体型は、アルツハイマー型の場合と少し異なります。「盗まれた!」となるのに加え、「誰かが来た」「逃げていくところが見えた」「盗もうと話しているのが聞こえた」といった幻覚や幻聴が見られることがよくあります。
レビー小体型で幻視や幻聴が目立つ場合、抗精神病薬の投与が検討されます。抗精神病薬はドーパミンをブロックする薬のため、レビー小体でもともとドーパミンが不足しているレビー小体型では、薬の量が少量でも副作用が出やすい。メリットデメリットを慎重に見ながら、薬を出す必要があります。