(48)父の命日…1年経って、ようやくわかったこと

公開日: 更新日:

 ようやく見る気になったアルバムや日記をめくるうち、「あっ」と声が出て、思いがけず大きな気づきが訪れた。

 父が死んだという事実に、この1年間、私はあまりにもとらわれていたのではないか。父は、確かにこの世に生きていた。死んだ人ではない。それまでの人生を生きてきた人、なのだ。

 写真のなかで笑う私の知らない青年の父は、青春を謳歌し、仕事に悩み、友人に囲まれながら、確かに生きていた。その記録は、いなくなったあとも、色あせずに残っていた。

「父は死んだのではなく、生きてきたのだ」

 その揺るぎない事実は、死をもって消えてしまうものではない。

 気づけてよかった。父に、ありがとうと心のなかで感謝した。私はこれからも生きてゆくしかない。父がかつてそうしていたように、私もまた、もがきながら。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元大食い女王・赤阪尊子さん 還暦を越えて“食欲”に変化が

  2. 2

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です

  3. 3

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  4. 4

    大食いタレント高橋ちなりさん死去…元フードファイターが明かした壮絶な摂食障害告白ブログが話題

  5. 5

    YouTuber「はらぺこツインズ」は"即入院"に"激変"のギャル曽根…大食いタレントの健康被害と需要

  1. 6

    大食いはオワコン?テレ東番組トレンド入りも批判ズラリ 不満は「もったいない」だけじゃない

  2. 7

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  3. 8

    「渡鬼」降板、病魔と闘った山岡久乃

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!