(26)意地を張らず、父ともっときちんと話をしていれば

公開日: 更新日:

 要介護度の通知が届いたら年末年始に帰省し、母が実家に戻って今後必要なケアが受けられるよう準備を進めたいと考えていたが、病院の手続きが遅れ、年内に通知は届かなかった。そして新年。何度電話をしても父が出ないことに不安を覚え、叔母に実家を確認してもらったところ、部屋で亡くなっているのが見つかったのだった。

 警察から電話での事情聴取を受けたのち、私は翌朝熊本に向かわなければならなくなった。急きょ手配した航空券の往復料金は7万円強。年末に父が現金書留で送ってきたお金のことを思い出した。「有意義に使いなさい」とだけ言われたその金額は、飛行機の往復運賃とほぼ同じだった。

 検視の結果と、ポストにたまっていた新聞の日付から、父は死後約1週間が経過していたと推定された。下着姿で、ベッドの脇の床にうつぶせに倒れていたが、周囲に乱れはなく、苦しんだ形跡もなかったという。おそらく意識を失ってそのまま、ということだった。父は最期まで、自ら医療に頼ることもなく、寿命をまっとうしたのだ。

 葬儀や火葬の段取りを進めながら、後悔、そして寂しさが襲ってきた。何よりもつらかったのは、そうした感情を分かち合える家族が誰もそばにいなかったことだ。母の主治医に電話で報告したところ、「お母さまには、当面お父さまの死を伝えないでください」と告げられた。母の症状に与える影響が大きいと判断されたからだった。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも