食べる喜びを失った時、高齢者の生活は大きく変わる
また、これまで大きな病気もなく、一人暮らしを続けていた90代の女性患者さんもいました。自炊をするなど年齢を感じさせないほどしっかりした生活を送っていましたが、ある日、自宅の階段でつまずいて転倒し、歯を複数本折ってしまいます。
その結果、食事をすることが難しくなり、大好きだった食事の準備もしなくなっていきました。食事量の低下や外出・交流機会の減少が重なり、認知機能やADL(日常生活動作)にも影響が出てきました。家族が週に何度か集まって開いていた食事会にも参加できなくなり、ネガティブな発言が増加。やがて一人暮らしそのものが難しい状態になってしまいました。
規則正しく食事を取ること、食事を通じて家族や周囲の人とコミュニケーションを取ることは、高齢者の生活にとって大きな意味を持っています。食べることができるという当たり前の日常が、どれほどありがたいものなのか。食事がどれほど日々の心の張り合いを支えているのか。在宅で患者さんを支える中で、私はその大切さをあらためて実感させられるのです。
食べられない原因は、痛み、口腔内のトラブル、嚥下(えんげ)機能の低下、薬の影響、便秘、気分の落ち込みなどさまざまです。食欲低下を年齢のせいだけにせず、早めに医療・介護チームで確認することが大切です。



















