腰痛を治すための筋トレがなぜ症状を悪化させるのか
誤った体の使い方が習慣になると恐ろしい連鎖に
では、なぜ上体を起こすトレーニングが逆効果になるのでしょうか。最大の理由は、本人はお腹周りを鍛えているつもりでも、実際には“まったく別の筋肉”を酷使してしまっている点にあります。
仰向けの姿勢から勢いよく体を起こす際、大半の人は腹直筋(お腹の表面の筋肉)ではなく、太ももの付け根やお腹の深層にある「腸腰筋(ちょうようきん)」を過剰に使って動作を行っています。
この筋肉が、まさに腰痛を引き起こす元凶、いわば“腰痛筋”の正体です。この腸腰筋は背骨から骨盤を通り、太ももの内側へと繋がっており、本来は歩行時に脚を高く持ち上げる役割を担う筋肉です。
お腹周りを正しく使う感覚が抜け落ちている状態で無理に体を起こそうとすると、脳はこの腸腰筋を代役として使い、強引に動作を完了させようとします。
つまり、目的の腹筋にはほとんど負荷がかかっておらず、太ももの付け根ばかりをパンパンに張らせる間違った筋トレになっているわけです。ここを過剰に鍛えて硬く収縮させてしまうと、骨盤が無理やり前方へ引っ張られ、腰の骨を鋭く圧迫する悪循環に陥ります。
こうした誤った体の使い方が毎晩の習慣になると、体の中で恐ろしい連鎖が始まります。
それは、体の表面にあるアウターマッスルや太ももの付け根にばかり余計な力が入り、本来しっかりと背骨を支えるべきお腹の奥の筋肉(インナーマッスル)が完全に機能停止して、サボり始めてしまうのです。
一部のサボっている筋肉をカバーしようと、別の筋肉が過緊張を起こします。その結果として骨盤の前傾が強まり、第1回でお話しした「反り腰」がどんどん進行していきます。
反り腰の角度がきつくなればなるほど、背中側の筋肉は四六時中引っ張られて休まる暇がなくなり、いよいよ腰の逃げ場は完全に失われます。よかれと思って腹筋運動の回数を増やすほど、自分で自分の腰椎を締め上げていると言っても過言ではありません。
では、この負のループから抜け出し、ガチガチに固まった体をリセットするにはどうすればよいのか。最終回では、筋トレへの思い込みを捨て、日常の何気ない動作で見直すべき具体的な体の使い方をお伝えします。
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