仕事を失うことは命を失うのも同然…見栄晴さんは下咽頭がんの手術を選ばなかった

公開日: 更新日:

見栄晴さん(タレント/58歳)=下咽頭がん

「たぶん“がん”だと思うので、病院に行ったら予約を早くしてくれるように初めにお願いしてください」

 今年の1月、診てもらった耳鼻科を出てすぐ、追いかけてきた看護師さんにそう言われ、さすがに動揺しました。

 お正月に家族旅行から帰ってきた翌日だったかな。喉の違和感が長く続いていたので、この機会に耳鼻科に行こうと思ったんです。大したことはないけど念のため……といった感じの気楽な受診でした。

 症状としては、2年ぐらい前からのみ込むときに喉がチクッとしていたことと、1年前から冷たいものやお酒がしみたり、ときどきむせることぐらい。耳鼻科でそれを伝えると、鼻からカメラを入れて写真を撮りました。すると「これはうちでは診られません。紹介状を書きますから」と大きな病院をすすめられたのです。なんとなく嫌な予感がする中で、例の「たぶん“がん”だと思うので……」という看護師さんの言葉でした。

 午前中だったので、少し冷静になろうとランチを食べてから家に帰って妻に一部始終を話し、それからすぐに紹介状の病院に電話をして、翌日診てもらうことになりました。その病院で「細胞を採ってみないとはっきりとはわかりませんが、見た感じがんだと思います」と告げられ、初見で「下咽頭がんの疑い」という診断になり、話がどんどん進んでいきました。

 正直、実感が湧きませんでした。家族や親戚でがんになったという話を聞いたことがないんです。なので、がんの知識がほとんどなく、「がんだとしても手術で取れば治るんだろう」と気楽に考えていました。

 まだ確定前でしたが、提案された治療法は「手術」か、「抗がん剤+放射線」かの二者択一で、後者を選びました。なぜなら、手術でがんを取り除けば抗がん剤+放射線治療よりも再発の確率は低いけれども、声帯を取ることになるので声を失うと聞いたからです。

 声を失うことは仕事を失うこと。仕事を失うことは命を失うのも同然だと思って、手術という選択肢は早々に消えました。「僕は芸能界の仕事をしていて、声を失うと仕事ができなくなってしまうので手術はしません。手術以外の方法で最善を尽くしてください」と懇願し、「その代わり、実験的な治療でも何でもやります」と訴えました。

 このとき、主治医が「見栄晴」をまったく知らなかったことが発覚して、「がん」と言われるよりもショックでした(笑)。30代の先生なので仕方ないですけど……。

 1週間後、「下咽頭がんステージ4」と正式に告げられました。でも、「4」がいいのか悪いのかも知らなかったので、大変だとは思いませんでした。ただ、周りはみんな優しく接してくれました。今思えばステージ4の威力ってやつでしょうね(笑)。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?