(32)老健の母親から電話…また、「家に帰る」の振り出しに
そこで後日、兄と共にあらためての説得に行くと、部屋の片隅に荷物がまとめられていることに気付いた。もしかすると、先の有料老人ホームかサ高住への入居を考えてくれたのかな。甘い考えで尋ねた。
「これまで見学したところで、興味がもてる施設はあった?」
答えは「ほとんど覚えていない」だった。がっかりしていると、おかんはこう続けた。
「ここ(老健)の人たちはみんな、もう大丈夫ね、自宅に帰れるねと言ってくれたので荷物をまとめた」
いったい何の話なのだろう。事の真偽を確かめるべく担当看護師に確認すると、前回の見学から帰った日、おかんは「もう自宅に戻れないのでは?」と不安を訴え「自宅に戻れるようあなたから息子に話して欲しい」とお願いしたという。
おかんの頭の中では「これで家に戻ることができる」と結論付けているようだ。また振り出しに戻りそうだ。困惑していると--。
「でも、お母さまは自分がひとりで生活するのが難しいことも理解していますよ。私もご一緒しますから、もう一度話をしてみませんか」
看護師の提案にすがることにした。



















