(6)アルツハイマー病を引き起こす脳のゴミ…「原因探し」から「始まり」を捉える時代へ
しかし22年、この論文に使用された画像データについて不正加工の疑いが指摘され、その後、論文は撤回された。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「この問題の発覚でアミロイドβ仮説が大きく揺らぎましたが、それ自体を完全否定するものではありません。家族性アルツハイマー病の遺伝学的研究などから、アミロイドβが発症初期に重要な役割を果たすことは現在でも広く支持されています。ただし、『特定の一種類のアミロイドβだけが病気の原因である』と単純に考えることは難しくなり、その他の要因の関与も含め、研究はより複雑な病態の解明へと進んでいるのです」
その中で、現在、アミロイドβと並んで重要視されているのが「タウタンパク質」である。タウは本来、神経細胞の内部で細胞の形を保つ役割を担う重要なタンパク質だ。しかし、異常な変化を受けると凝集し、神経細胞内に「神経原線維変化」と呼ばれる異常な蓄積を形成する。
近年のPET検査によって、このタウ病変が脳内で広がる範囲は、認知機能低下と非常によく一致することが明らかになった。つまり、アミロイドβが蓄積するだけでは認知症は完成せず、その後、タウが広がることで神経細胞が障害され、症状が進行すると考えられている。


















