梅毒「地方だけ増加」のナゾ…20代女性のライフスタイルに変化?
全国では減少に転じた「梅毒」が、地方ではいまだに収まらない。ピークだった2023年の新規梅毒報告数は年間1万5055人。2025年には1万3530人まで減り、10.1%減少した。今年も全国的な減少傾向が続き、東京、大阪など大都市圏では改善がみられる。
ところが、2026年第35週までの累積報告数(速報値)をみると、2023年の同時期を上回る県が9県ある。しかも宮城、山形、富山、滋賀の4県では、2025年の同時期も上回っている。なぜ、この地域では梅毒が減りにくいのか。
近年の梅毒感染では、20代女性の増加が目立つ。かつて梅毒は「娼婦の病」「貧困層の病」とされたが、いまや特定の職業や社会階層だけの感染症ではない。国立感染症研究所の「感染症発生動向調査で届けられた梅毒の概要」によると、女性感染者のうち風俗従事歴がある人は3割程度、女性向け風俗の利用歴がある人は1%程度にとどまる。
そこで、まず若い世代の男女の経済格差に注目した。2025年賃金構造基本統計調査から、20~29歳の男女の所定内給与額を比較すると、男女賃金格差は富山8.88%、宮城8.31%、山形7.33%に対し、滋賀は4.67%だった。
「男女平等」が叫ばれ、若い世代に割り勘文化が広がる一方、男女の賃金格差は残っている。こうした経済的な違いが、若い女性の交際や性的関係の形成に何らかの影響を与えているのではないか。
しかし、賃金格差が大きい県ほど梅毒が増えているわけではない。2026年第35週までの人口10万人当たりの累積報告数は、宮城6.91人、滋賀4.45人、山形3.63人、富山3.25人。賃金格差の大きさとは一致しない。
そこで、若年女性を取り巻く生活環境の違いに目を向けた。大学や大学院への進学は県内外への移動を伴うことも多く、新たな同世代との人間関係を築く機会にもなる。4県の大学・大学院在学者の割合を調べた。
2020年国勢調査では、女性の20~24歳、25~29歳の大学・大学院在学者割合は、▽宮城26.9%、1.5%、▽山形21.8%、0.7%、▽富山19.4%、1.0%、▽滋賀31.0%、0.8%。東京は34.4%、1.5%であり、宮城ではすでに20代後半の在学率は東京に並んでいる。
もちろん、在学率が高い県ほど梅毒報告率が高いわけでもない。ただ、地方の若者の生活圏が広域化し、大都市圏と似た変化が進んでいる可能性はないのか。
医事評論家で元長浜バイオ大学教授の永田宏氏(医療情報学)が言う。
「昨今の梅毒感染の広がりは、若い女性の性的関係の形成期と、結婚による固定的な性的パートナー形成との間の時間的なずれが原因のひとつです。若い女性の欲求や親密さを求める動きを受け止める社会的な仕組みが十分に整備されていないことが、性的パートナーの流動化を招き、性感染症の拡大に影響している。それが解消されない限り、梅毒感染は持続的に増え続けていくことになるのではないか」


















