羽生善治九段が園遊会で見せた“対局”同様の当意即妙な返答
1989(昭和64)年1月7日午前6時33分。天皇陛下(昭和天皇)が87歳で崩御された。
その日、東京の将棋会館では女流棋戦の対局が1局だけ組まれていた。対局者の女流棋士は「こんな時に将棋を指していいのかしら……」と、戸惑った様子だったという。
実際に陛下の崩御が朝のニュースで報じられると、当日に予定されていた催しや行事はほとんど中止になった。
ただし、将棋の対局は予定通り行われた。将棋を愛好された陛下への供養になったかもしれない。
同年1月7、8日の週末は、大半のテレビ番組が天皇追悼特集に切り替わった。しかし、NHK教育テレビは通常通りだった。8日午前の「NHK杯争奪将棋トーナメント」の番組も放送された。視聴率は平均で約1%だが、当日は約5%に上がったという。
天皇・皇后両陛下が主催する「園遊会」で、招待された棋士にお言葉をかけた例がある。
76年には、陛下が塚田正夫九段(当時62)に「将棋をまだやっているの」と尋ねられた。戦後間もない49年に皇居の「済寧館」で名人戦の対局が初めて行われ、塚田は敗れて名人を失った。陛下は「行幸」されていて、後日に結果を知った。往時が懐かしかったようだ。現役だった塚田は「陛下は将棋をお好きだそうで」と答えた。