「あだキチ」(大阪・西成)その正体、飲んで確かめるしかない!
ある時は俳優、ある時はパティシエ、ある時は占い師、ある時はデザイナー、ある時は講師、ある時は旅行ガイド、またある時は全日本イベント連盟代表理事、しかしてその正体は──。
昭和の人気映画&テレビ番組「七つの顔の男」の名探偵・多羅尾伴内ではない。立ち飲み屋のマスターなのであ~る。
その男、鬼龍院ヨネキチさん(44)。日雇い労働者の町として知られる釜ケ崎・あいりん地区の目と鼻の先。動物園前商店街の2番街に「あだキチ」はある。創業は今年1月と若く、7年前にイベントで知り合った足立尚樹さん(65)との共同経営だという。きっかけは2人のこんなやりとりだった。
手作りチーズケーキに酢カクテル
「なぁ、ヨネキチさん。いま立ち飲み屋を開いているんだけど、普通の居酒屋じゃなく何か面白い店を一緒にやらないか。あんたは多様な活動をしているから、ユニークな案があるはずだ」
「それならチーズケーキをアテにして酒が飲めるちょっと変わった立ち飲み屋がいい。赤みそ味のほか、酒かす、抹茶、カタラーナの各バージョンをパティシエのボクがおいしく作ります」
「それはオモロい。見た目は普通の立ち飲み屋でも、中に入れば『風変わりな店やなぁ』と面白がってもらえそうや」
「ぶどう、りんごなどを使った酢ベースの健康カクテルもメニューに加えましょ。そして店内でお客の運勢を占い、似顔絵を描き、プラスチック板で小物を作るワークショップも体験してもらう。店名は2人の名前から『あだキチ』で」
「よっしゃ、決まり!」
ヨネキチさんは俳優として西成を舞台にした話題の映画「解放区」に出演。2年前に全国60カ所で上映され、ヒロインの幼なじみ役で舞台あいさつにも立った。
「役者だし、ケーキは作るし、占いはするし。常連さんたちはボクのいろんな体験談も楽しみにしているみたい。カウンターだけの店は10人も入れば満員だけど、みんな居心地がよさそう。それがうれしいですよね」と、多芸多才な人気者は会心の笑みを浮かべる。
4種類の手作りチーズケーキは、のれんをくぐった客の9割が注文。それをパクつき、酢カクテルを飲みながら、映画や観光ネタ、占い診断などで連日大盛り上がりの「あだキチ」だ。
(住)大阪市西成区山王2-14-18
(℡)090・3274・9970
(営)午後3~9時(月曜休み)
生ビール・日本酒・酢カクテル各種400円。チーズケーキ各種350円