新宿「食堂 長野屋」ワタも混ぜ込んだイカ煮の煮汁だけで日本酒5合はイケる
創業110年、時代をリアルタイムで見てきた歴史がある
熱燗とつまみが来たぞ。お、イカ煮はワタも混ぜ込んである。これは日本酒にドンピシャだ。イカを口に放り込み、そこに熱燗をぐびり。サイコ~。甘辛く煮込んである厚揚げをバクリ。濃い味付けはご飯を誘う。が、飯を食ったら終わっちゃう。飯を我慢し、お酒をもう一本。イカワタを混ぜてある煮汁だけで5合はイケるよ。外国人君たちに、この味はわからないだろうな。
ところで、この辺りは戦後すぐに闇市が並んだところだ。いくつかのプロの稼業がエリアごとにきちんと棲み分けして商売をしていたわけだ。取り締まりのMPも跋扈していたのだろう。そんな時代を長野屋はリアルタイムで見てきた歴史がある。その当時の店主はまさか外国人がここでかつ丼を食べることなど思いもよらなかっただろう。
突然だが、ここのトイレは和式である。外国人客はどうするのだろう? 「ちゃんと洋式用の便座が用意してありますよ」。さっきのお兄さんが見せてくれた。こういうところが日本のいいところ。郷に入らば郷に従えを声高に叫ぶと人は不寛容になる。創業110年は伊達じゃない。そのホスピタリティーに学ぶことは多い。 (藤井優)
○食堂 長野屋 新宿区新宿3-35-7



















