「パンダがいなくなった白浜」飼育スタッフが明かす30年の繁殖秘話と“いつか戻る日”への思い
技術と経験を若い世代へ引き継いでいきたい
1994年、永明と蓉浜が来園し、ここから同パークとパンダの物語が始まった。しかし来園から約3年後、メスの蓉浜が亡くなり、永明はしばらく単独で過ごすことになる。
2000年7月、中国で出産経験のある梅梅が来園した。梅梅は来園時すでに妊娠しており、到着後に良浜を出産。その後も永明との間に次々と子どもが生まれ、パンダファミリーは広がっていく。03年には、梅梅が双子の隆浜・秋浜を出産し、飼育下で初めて双子を育て上げた。この頃から飼育下でのパンダの個体数は急速に増えていった。
また、同パークでは季節外れの発情による冬生まれのパンダが3例確認されている。良浜は、世界で初めて冬生まれで育成されたパンダだという。
ここまで大きなファミリーに成長した重要な要素の一つが、繁殖計画だ。吉田さんが振り返る。
「私は2010年から飼育に携わっていますが、1994年から関わってきた先輩方が残してくれた日報やメモなど、膨大で貴重なデータが今につながっています。繁殖期になると、マーキングや水浴といった行動が見られます。発情期には落ち着きがなくなり、体が熱くなるため水浴を頻繁に行います。この時期にお見合いを行い、行動観察を重ねて発情のピークを見極めます。交配が成功すると、3カ月~5か月で出産に至ります。桜浜・桃浜の出産時には、座った状態での出産が確認され、非常に衝撃的な瞬間でした。2頭は体の大きさがほぼ同じでしたが、尻尾の太さで見分けていました」
出産後は、母親パンダの生活が一変し、子育ての時間が大幅に増える。スタッフは良浜をサポートし、中国人スタッフが赤ちゃんのケア、日本人スタッフが母親のケアを担当した。
「楓浜の出産時には中国人スタッフが不在で、私たち日本人スタッフだけで初めて取り上げを行いました。ハチミツを使って注意をそらし、その隙に赤ちゃんを取り上げる役目を私が担当しました。非常に緊張した瞬間でしたが、元気な赤ちゃんを確認でき、安心しました。双子を初めて良浜に抱かせた際も、最初は戸惑いながらも、しっかりと2頭を受け入れ、優しく育ててくれました」
こうして積み重ねてきた繁殖の最終目標は、野生のパンダを増やすことだ。
「アドベンチャーワールドで生まれたパンダたちが中国で親となり、その子孫が野生復帰トレーニングを経て自然に帰っていくことを願っています。現在、アドベンチャーワールドにはパンダはいませんが、いつ戻ってきても対応できるよう、技術と経験を若い世代へ引き継いでいきたいと考えています。これからもパンダの魅力を広め続けていきますので、どうぞ見守っていただければ幸いです」
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