「殺意」はどう認定されるのか…アディーレ法律事務所事件から読み解く
7月1日、池袋のアディーレ法律事務所で従業員が同僚を刺殺した事件が社会に衝撃を与えました。被疑者は、警察の調べに対し、「ついに我慢できなくなり、刺した」「死んでも構わないと思った」などと供述しています。
一方で、「刺したことは覚えていないが気がついたら刺していた」「殺そうと思ったわけではなく痛みを味わわせたかった」とも供述しています。
今回の事件で注目されるのが、「殺意」の有無とその認定です。殺人罪(刑法199条)が成立するためには、人を死亡させることについての故意、すなわち、「殺意」が必要です。実務上、殺意には、「人の死亡という結果発生に対する認識・認容」が必要であると解されています。認識とは、人が死亡する可能性や蓋然性を予見すること、認容とは、人が死亡してもよい、あるいは、死亡するかもしれないが、それでも構わないと受け入れる心理状態をいいます。殺意は、被疑者の内心の問題であるため、供述だけでなく、行動や状況を含む客観的事実を踏まえて総合的に判断されることになります。
今回の事件の被疑者は、「死んでも構わないと思った」といった供述をしていることから、人が死亡する可能性を予見し、それを受け入れる心理状態であったといえそうです。「殺そうと思ったわけではなく痛みを味わわせたかった」という供述もしていますが、これだけから直ちに殺意がなかったことにはなりません。