“無税”で上場したソニーFGは特別扱いか…後続企業に立ちはだかる高い壁
通常の新規株式公開(IPO)と違い、証券会社の株式引き受けを伴わないダイレクトリスティング方式のため、引受手数料などの上場コストを抑えられるメリットがある。
さらに、税的恩典が大きい。「親会社に持ち分を一部残してスピンオフを行う際、一定の要件を満たすと譲渡損益や配当へ課税されない」(金融関係者)という。パーシャルスピンオフでは、子会社を完全に分離せず、元親会社に持ち分を一部残すことで、譲渡損益や配当の課税が繰り延べられるのだ。
■24年度の税制改正で…
また、親会社のブランドやシステムを引き続き使う事例が多いため、親会社との一定の関係維持が円滑な事業切り出しにつながる。いわば、いいとこ取りの会社分割なので、「利益率が低空飛行の事業部門を抱えるコングロマリットなど、電機メーカー、重電系など、今後ソニーFGに続く企業が相次ぐのではないか」(金融関係者)との見方もある。
だが、そこには壁が立ちはだかっている。
「24年度の税制改正で、分離する企業の主要な事業が新規活動であることという要件が加わった。このため今後、ソニーグループのように既存事業を切り出すには制約がかかる」(金融関係者)というのだ。ソニーグループが利用したパーシャルスピンオフは、この要件が加わる直前の「23年度版」。「いいとこ取りのパーシャルスピンオフ税制はソニーFGが最初で最後だったということになりかねない」(金融関係者)と見られている。
遠藤社長は上場直前のメディア向け説明会で、「これまではソニーグループしか、(ソニーFGを)モニターする株主はいなかったが、これからはおそらく30万社・人以上の株主に見られ、厳しく批判される」と語っていた。真価はこれから問われる。