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高野孟
著者のコラム一覧
高野孟ジャーナリスト

1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。

拉致再調査が官邸の思惑通りに動かない理由

 じりじりと下がる内閣支持率を一気に挽回する決め手として、安倍晋三首相が仕組んだ日朝間の「拉致再調査」だが、北朝鮮の特別調査委員会による最初の報告が届くはずの9月中旬を前にして、官邸周辺にはやや悲観的な空気が漂っているという。

 当初の思惑では、特定および認定拉致被害者の1人でも2人でも生存が明らかになれば、それはもうマスコミ挙げての一大報道合戦になり、その勢いに乗って安倍自らがピョンヤン訪問。訪問国の数だけは多いが目覚ましい成果はほとんど何もない安倍外交に大輪の花を咲かせようということだったが、どうもそううまく運びそうにない。事情に詳しい北朝鮮消息通が解説する。

「北朝鮮のペースにはめられたと思う。1つは、今回の日朝合意で『全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施する』とあるのを、日本側は勝手に最大関心事である拉致被害者の調査が優先されると思い込んでしまったが、北側の報道などでは戦没者の遺骨、日本人妻、残留日本人、それから拉致という順番になっていて、北にとって痛くもかゆくもないところから“小出し”にして、日本をズルズルと引っ張っていく余地がある。2つには、そうなりそうな理由として、北は調査すると言葉で約束しただけなのに、日本は早速、経済制裁の一部解除という実際行動で答えた。その直後の7月3日に北の宋日昊担当大使が北京で『日本の制裁解除の内容を見極めた上で調査結果を発表する』と言ったように、最初から足元を見られている。第3に、日本が前のめりになるのは、今回の調査委員長に、最高権力機関である国防委員会の直下にある国家安全保衛部の徐大河副部長が就いたことで、外務省筋はさかんに『初めて大物が出てきた』とか『透明性がある』とか期待をあおっているが、本当の権力中枢は、旧ソ連でいえばKGBに当たる国家安保部よりも、労働党の組織指導部だ。このあたりの判断がちょっと甘かったと官邸も気づき始めているのではないか」と。

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