日本のFA選手は建前ばかり なぜ「お金が一番」と言わない?
■裏切り者扱いが怖いのか?
日本球界は選手、ファンを問わず、FA移籍は「育ててくれた球団への裏切り」と受け取る者が少なくない。今オフ、阪神から広島に復帰した新井は07年のFA移籍からというもの、古巣のファンの罵倒を浴び続けてきた。
日本ハムからヤクルトに移籍した大引は会見の場で、「首脳陣から『来季も一緒に頑張ろう』というような言葉をもらえなかった」と愚痴をこぼした。こんな女々しい理由を語るのも、移籍するのは「球団に非があったからだ」と訴えたかったからだろう。
プロ野球ファンで作家の吉川潮氏が言う。
「米国では、厚待遇でライバル企業に引き抜かれることは珍しくない。それが日本だと裏切り者扱いされてしまうのは、ビジネスライクというものが定着していないからです。しかし、世の中は刻々と変わってきている。1つの会社に定年退職まで勤めるのが美徳なんていわれたのは昭和の時代まで。今の若者は転職に何のためらいもない。プロ野球は球団も選手もファンも、そうした時代の流れに取り残されている。選手も移籍するなら堂々と出て行くべきで、ファンもそれにケチをつけてはいけません」
サラリーマンには手の届かない夢の世界に生きているのなら、腕一本で5億でも10億でも稼げばいい。FA宣言してのキレイ事など聞きたくない。