長嶋がすがった幻の逆転ホームラン

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 形の上では辞任となった翌日、長嶋はコーチ全員を自由が丘の「楼蘭」という中華料理店に呼んだ。投手コーチだった高橋善正氏が当時を振り返る。

「そこは巨人がよく使っていた馴染みの店です。長嶋さんは相当悔しかったと思う。でも、ベンチであれだけ感情を表に出す人が、愚痴や未練がましいことは一切言わなかった。『君たちには申し訳ないが、私は辞めることになった』と淡々と語った。監督が言ったわけではないが、9月ごろから3位になれば監督は続投するとみんな思っていた。だから選手の尻を叩いて最終戦は全力で勝ちにいき、安心して帰京したらあの(解任)会見です。コーチ陣からは『巨人って何なんだよ!』という怒りの声が上がった。もちろん、そんなことはその場でしか言えない。悔しさ、怒り、失望などが錯綜し、豪華なコース料理はちっともおいしくなかった」

 長嶋が監督復帰会見を行うのはそれから12年後、92年10月のことである。

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