著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

中日にも在籍…「サイ・ヤング賞」初代受賞投手の壮絶人生

公開日: 更新日:

 登板過多による故障、アルコール依存症、引退後の破産……。現在の大リーグで選手を取り巻く大きな問題だが、2月19日に92歳で死去したドン・ニューカムはこれらの問題に苦しみ、困難を乗り越えた代表的な野球選手のひとりだった。

 1944年にニグロ・ナショナル・リーグのニューアーク・イーグルスに入団。49年にブルックリンに本拠を置いていたドジャースへの昇格を果たして新人王に。56年には38試合に登板して27勝を挙げて最多勝を獲得し、新たに創設されたサイ・ヤング賞の最初の受賞者となった。

 現在と異なり、66年までサイ・ヤング賞はナショナル、アメリカンの両リーグから1人のみを選ぶ仕組みであった。従って、ホワイティ・フォード(ヤンキース)やウォーレン・スパーン(ブレーブス)といった優れた投手を抑えて受賞したニューカムを、誰もが「殿堂入り確実」と思った。

 だが、56年のシーズン最終戦で登板過多により右ひじを故障したことが、ニューカムの野球人生を暗転させる。右ひじの故障を夫人にしか知らせていなかったため、監督のウォルター・オルストンはニューカムをヤンキースとのワールドシリーズに2回起用したものの、いずれも乱調に終わることになる。しかも、シリーズの終了後に故障を隠していたことが問題視され、元来気の合わなかったニューカムとオルストンの関係は悪化。結局、ニューカムは58年6月にレッズに放出され、60年にはインディアンスに移籍。62年には来日してドラゴンズに加入し、この年をもって現役を引退する。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  2. 2

    国民民主党の支持率ダダ下がりが止まらない…ついに野党第4党に転落、共産党にも抜かれそうな気配

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  3. 8

    脆弱株価、利上げ報道で急落…これが高市経済無策への市場の反応だ

  4. 9

    「東京電力HD」はいまこそ仕掛けのタイミング 無配でも成長力が期待できる

  5. 10

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー