著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

名監督・松平康隆さんはアイデアマンで名演出家でもあった

公開日: 更新日:

アイドルグループを大会のキャラクターに起用

 日本バレーボール協会会長時代の松平は、ジャニーズ事務所に交渉し、人気アイドルグループを大会のキャラクターに起用。それは今も変わらず、協会は若年層への普及にも力を入れている。

 無論、指導者としても異彩を放った。東京大会後に監督に就いた松平は、72年ミュンヘン大会での「金メダル獲得!」を目標に掲げ、身長195センチ・体重85キロ以上の有望選手を集めた。そして、「地獄の9メートル逆立ち特訓」を課した。“世界の大砲”と称された大古誠司は語る。

「私が逆立ちすれば高さは240センチ以上になる。その状態で9メートルも歩く。それを『1週間でマスターせよ!』と松平監督は命令する。結果的に全員がマスターしましたが、監督はアイデアマンでしたね。当時は“ダブルBクイック”“時間差攻撃”“1人時間差攻撃”などの戦法がありましたが、すべて監督のアイデア。“くノ一スパイク”というのもありました」

 こうして松平監督率いる男子バレーはミュンヘン大会に臨み、準決勝のブルガリア戦で、セットカウント0―2から大逆転の「ミュンヘンの奇跡」を演じた。さらに決勝で東ドイツを3―1で破り、待望の金メダルを獲得した。

 大古はこんな秘話を披露した。

「実は決勝戦の前に監督が『金メダルを取ったら俺の裸踊りを見せてやるぞ!』と言っていた。約束通り、その夜の宴会でやってくれました。パンツははいていましたが……」

 再び都下の多磨霊園。松平康隆の墓前で両手を合わせた菅原は、次の地である広島に向かった。そこには“世界のセッター”猫田勝敏が眠っている。  (つづく)

▼まつだいら・やすたか 1930年、東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後に日本鋼管(現JFEホールディングス)入社。64年東京五輪男子バレーボールコーチで銅、メキシコ大会監督で銀、ミュンヘン大会監督で金メダル。国際バレーボール連盟名誉副会長。98年日本人で初めてバレーボール殿堂入り。

【連載】東京五輪への鎮魂歌 消えたオリンピアン

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「マラソン」と「大腸がん」に関連あり? ランナー100人への調査結果が全米で大きな波紋

  2. 2

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態

  3. 3

    高市総裁「首相指名」に漂う不安…自民党内は“厭戦ムード”も燻る火種、飛び交う「怪文書」の中身

  4. 4

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    高市自民、公明からの三行半で早くも本性露呈…「やられたら秒でやり返す」「イキらなきゃ負け」のオラオラ体質

  2. 7

    出来たとしても高市政権は短命…誰も見通せない激動政局の行方を徹底分析(前編)

  3. 8

    佐川宣寿元理財局長のメール開示「遺族と話し合う」…森友文書で加藤財務大臣が明言

  4. 9

    進次郎氏落選もダメージなし? 妻・滝川クリステルが目指した「幸せ家庭生活」と耳にしていた夫の実力

  5. 10

    侍J井端監督 強化試合メンバー発表の裏に「3つの深謀遠慮」…巨人・岡本和真が当選のまさか