著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

「米国プロ野球史上初の女性監督」が注目される本当の理由

公開日: 更新日:

 それでは、ヤンキース傘下の短期A級タンパ・ターポンズの監督にレイチェル・バルコベックが就任したことはどのように考えられるだろうか。

 2020年にルーキーリーグのGCLヤンキースの打撃コーチとなったバルコベックは「米国プロ野球史上初の女性コーチ」であり、今回の起用で「初の女性監督」となった。

 米国社会の基本的な価値観のひとつは多様性の尊重だ。これに対し、球界は女性の球団経営や指導への参画の遅れから「閉鎖的」と批判を受けてきた。従って、ヤンキースによる人事という話題性の高さを考えれば、バルコベックの監督就任は球界による米国社会への実績づくりの域を出ないともいえる。

 だが、ヒルマンが指摘するヤンキースにおけるマイナー球団の位置付けを踏まえれば、単なる形式的な人事ではないことは明らかである。ヤンキースはむしろ、バルコベックの指導者としての能力を評価し、球団の将来を支える人材の育成の一翼を担わせる、重要な人事を行ったことになる。

 事前の評価と実際の成果とが一致せず、指導者としての経歴を終える者もいる。しかし、バルコベックが自らの能力を試す機会を得たことは間違いないわけで、ターポンズでどのような実績を残すか、そしてどのような道を進むかに注目が集まる。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性