六川亨
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六川亨サッカージャーナリスト

1957年、東京都板橋区出まれ。法政大卒。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年にサカダイを離れ、CALCIO2002の編集長を兼務しながら浦和レッズマガジンなど数誌を創刊。W杯、EURO、南米選手権、五輪などを精力的に取材。10年3月にフリーのサッカージャーナリストに。携帯サイト「超ワールドサッカー」でメルマガやコラムを長年執筆。主な著書に「Jリーグ・レジェンド」シリーズ、「Jリーグ・スーパーゴールズ」、「サッカー戦術ルネッサンス」、「ストライカー特別講座」(東邦出版)など。

W杯最終予選3.24アウェー豪州戦 代表メンバー選考で森保監督が迫られる難しい決断

公開日: 更新日:

 JFA(日本サッカー協会)は、3月16日にカタールW杯アジア最終予選のオーストラリア戦(24日・シドニー)とベトナム戦(29日・埼スタ)を戦う日本代表メンバーを発表する。

■吉田、冨安、大迫のコンディションに不安

 通常なら登録枠は23名だが、コロナ禍の影響を考慮して選手を多めに招集する可能性が高い。そこで気になるのが、負傷者の状況である。1月25日の中国戦と2月1日のサウジアラビア戦を欠場したDF吉田麻也は、復帰が濃厚だ。

 一方、アーセナルのDF冨安健洋は左ふきらはぎを負傷し、アルテタ監督も復帰の可能性について「一定期間、継続して練習する必要がある。再発の防止に努めたい」と慎重な姿勢を崩さなかった。

 このため、3月ラウンドの招集を森保一監督は見送る可能性が高い。となると冨安の代役は、サウジアラビア戦でCBコンビを組んだ板倉滉か谷口彰俉ということになるだろう。

 前線では、神戸のFW大迫勇也もケガで招集されるかどうか微妙だ。大迫は、3月2日の横浜M戦でFW武藤嘉紀が負傷したこともあり、途中出場したものの、その後も6日の広島戦と11日の鹿島戦ともにベンチ外だった。 

 森保監督は、アタッカー陣の中心選手と考えているので「絶対にできない状態ではないと思うが、クラブとコミュニケーションを取って確認しながら、本人ができる状態か見極めたい」とコメント。難しい決断を迫られている。

大迫の代役は前田大然か、それとも上田綺世か

 リタイア中のFW古橋亨梧に加え、大迫まで招集できないとなると、これまで招集された選手の起用法から考えて代役は古橋のチームメートのFW前田大然か、国内組なら鹿島FWの上田綺世ということになる。

 それとも新たにFWを招集するのか、注目しながら指揮官の決断を見たい。

 森保監督は2021年12月の記者会見で「序列が決まっているみたいに感じられる」と記者から質問されると、「チーム作りにおいて、やはりベースがなければいけない」と話し、さらに「序列はあるが、絶対ではない」と繰り返し強調した。

 2月1日のサウジアラビア戦の招集メンバーは、吉田と冨安が不在のために谷口がスタメンで起用され、他にもGK権田修一とDF長友佑都、DF酒井宏樹、大迫の4人が国内組として出場したが、ほんの1、2年前までは彼らも海外組の選手だった。

■欧州組にならないと代表に呼ばれない?

 12人のリザーブも名古屋DFの中谷進之介と川崎DFの山根視来以外の10人は、すべて海外組である。

 日本代表において「代表主軸の大半が海外組」という状況は、今に始まったことではない。海外組の増えていったジーコ・ジャパン辺りから続く〈伝統〉とも言える。当時は「国内組では代表に呼ばれない」という判断が働き、代表でレギュラーポジションを獲得するため、海外移籍にトライする選手も続出した。

 海外組について森保監督は、今年2月に単独で海外の試合を視察し、トータルで14人の選手と話す機会を得た。そこで<ふたつのこと>を痛感したそうだ。

■海外選手は孤独な戦いをしている

 まずは、「(代表は)クラブと違って戦術を落とし込む時間が少ない。なので選手は思いっ切り試合に臨めるように個々の役割を明確にし、練習やミーティングでしっかり、分かりやすく伝えないといけない」と思ったという。

 そして「選手は自分のポジションをつかむために孤独に戦っているな、と思った。自分が活躍しなければ、そこが補強のポイントになる。選手は厳しい戦いをしていると感じた」そうだ。

 似たような話を、ザッケローニやハリルホジッチを代表監督に招聘したJFA術委員会の霜田正浩委員長(当時=現大宮監督)から聞いたことがある。

 例えば大迫である。現在は負傷で試合から遠ざかっているが、負傷が癒えれば押しも押されもしない神戸のレギュラーFWだろう。しかし、ブレーメン時代はケガでコンディションを落としたこともあったが、ゴールという結果を残せないためにトップ下やサイドでの起用が多くなり、次第にベンチを温める機会が多くなった。

生き残るためのシビアな戦い

 川崎の場合、ケガをした場合は別だが、しばらくゴールから見放されてもMF家長昭博は絶対的なアタッカーだろうし、谷口は失点が続いて負けが込んだとしても、レギュラーCBとして使われ続けるに違いない。

 こうしたJリーグと海外クラブとの「生き残るためのシビアな戦い」に明確な差があるがゆえに、ザッケローニ、ハリルホジッチともに海外で活躍している選手を優先して起用した。

 加えて、海外組は日本で試合をするために長距離移動と時差、肉体的な疲労を覚悟の上で所属クラブを離れて往復している。代表の活動に参加することは所属クラブで出番を失う危険を伴うが、それを覚悟の上で試合直前に来日し、試合翌日には機上の人になっている。

 それだけの苦労に耐えるだけの<重み>が日本代表にはある、ということだ。

■コンディションなら国内組が有利

 ただし、話を24日のオーストラリアとのアウェー戦に戻すと……日本とオーストラリアには時差がないが、移動時間は直行便で10時間程度、乗り継ぎなら14~15時間程度といったところだろう。

 ところが欧州からは乗り継いで24時間以上かかるようで、森保監督も「日本から(24時間以上かかる)ブラジルへ行くような感覚」と話していた。

 そうなると、当然ながら国内組の方がコンディションは良くなる可能性も出てくる。

 1月に国内組の選手だけで代表合宿を張ったように、川崎MFの脇坂泰斗、鹿島MFの荒木遼太郎、浦和FWの江坂任といった国内組を増やしてW杯予選に臨むのか? 16日の代表メンバー発表を注視したい。

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