コロナ禍のACLアウェー戦 熱烈サポーター観戦記⑤ジョホールバルからフロンターレに愛を込めて

公開日: 更新日:

 有観客みたいだけど行けるかな?無理だろうな?あれっ行けそうだ!行くぞ!行くしかない!

 ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)の川崎フロンターレのステージリーグに参戦し、マレーシアのジョホールバル(JB)に滞在すること2週間。

 コロナ禍での渡航だから国によって色々な規制や条件もあるし、どうすれば行けるの?何が必要なの?国によって、街によって、場所によって何が平常時とは違うの?その情報収集が大変だった。とにかくハードル、高かったわー。

 欧州にサッカーを観に行ったサッカー仲間の話を聞くとアジアって、やはり規制が厳しいように思える。なかなかwithコロナに踏み切れないと言うか……。でも、ワタシ自身は「何事も乗り越えられない壁はない!」と突き進み、それなりに不安もあったけどJBでは、ホント楽し過ぎる時間を過ごせたよ。 

 スタンドで思いっ切り飛び跳ね、大きな声で選手の名前を叫び、勝利に大喜び出来る感動に打ち震え、負けた試合を心の底から悔しがる……そんな中に新しい出会いもあったり。

 コロナでマッタリと平板な日々を送っていただけになおさら快感だった。 マレーシアに行ってフロンターレ愛を叫んだワタシ、「海外に出掛ける」という障壁を乗り越えた「勝ち組」なんじゃないかなぁ……なんて自画自賛しているよ(笑い)。

 ACL5戦目の蔚山現代戦は、現地4月27日午後5時キックオフ。午後からのスコールでホテルを出ると蒸し蒸しのサウナ感たっぷり。到着したのはワタシにとっては初のラーキン・スタジアム。そうです!野人・岡野さんのゴールで日本サッカー初のW杯出場が決まった、あの「ジョホールバルの歓喜」の舞台です!

 日本サッカーにとって歴史的なゴールの生き証人でもあるスタジアムで宿敵のライバル蔚山に勝つ!って気合いを入れて臨みました。

声出し組が10人以上になった

 現地レポートの前にーー。

 そもそもワタシは(川崎フロンターレのホームスタジアムの)等々力では、応援主体エリアではなく、「バックS北」という「バックスタンド側の2階席」に陣取っています。

 熱烈応援は若い子たちに任せ(笑い)、試合を丹念に観戦しながら、でもしっかりと応援もするよ!という人の多いエリアの住人です。でもね、海外の試合や国内のアウェイ戦では全力応援しちゃうよ!というスタンス。 

 蔚山現代戦の観客数は217人。フロンターレ側には太鼓と横断幕を抱えて5、6試合目を応援に来たサポ集団「TAMAGAWA BOYS」の男性4人の精鋭が加わり、大きな「声出し組」は10人少々に増えた。

 もちろん小所帯。でも観戦者が少ない分、ワタシたちの応援の声のまぁ~よく通ること。

 声出し応援って、国内では2020年シーズンの2月以降、出来なくなっているのでいきなり大声で応援といっても皆んな、最初は「喉を開く」のに精一杯。

 しかも!10人少々の応援なので交代休憩なんて暇もなく、水分補給しながら休みなしで声を張り上げ、太鼓を力一杯に叩き続ける。確実に選手の耳に届いていると信じ、少しでも後押しをしたい、一緒に戦いたいという一心でね。

■愛するチームに勝利を届けたい

 選手バスがスタジアムに到着した時のチャント、アップ時の選手名のコール、「川崎市民の歌」、CK時には「レッツゴー、レッツゴー」……。コロナ以前には、当たり前にやっていたチャントがこれだけ楽しく、嬉しく、幸せなものか、存分に噛み締めながら。

 自分の家族でもないし、仲の良い友達でもない。でも、愛するチームに勝利を届けたくて「その時の自分に出来ること」を最大限の努力とともに実行する。

 でも、すべての試合に勝利することはできない。蔚山戦は2点を先制され、1点返し、また追加点を献上して2点差にされ、また1点返したけれども1点届かず、試合終了のホイッスルが鳴り響いてしまった。ピッチに倒れ込む両チームの選手たち。でも、フロサポのコールはホイッスル後も止まらない……。

 本当に蔚山には勝てない。悔しいほど勝てない。それでも応援合戦では勝っていたぞ!自惚れじゃなく、本当にそう思っています。

これって海外試合アルアル

 試合後、コロナ禍なのでバスに乗り込む選手たちには近付かずに見守りました。蔚山は選手がサイン対応。それを見てサインを頼もうと近寄ろうとしたマレーシアかタイのフロサポさんに「川崎は今の状況下、接触なしなんだ。ごめんね。でも本当に応援ありがとう」と伝えると分かってくれた(と思う。ちゃんと通じたかな……)。 

 コロナ禍前の「当たり前だったリアルな応援」のシーンが早く戻りますようにーー。そう願ってやみません。

 JBでの6試合目となる4月30日の最終戦・広州FC戦は、後半になるとスコールに見舞われ、1-0の辛勝となりました。

 この試合には、現地の子どもたちが招待されたみたい。親子連れがたくさんだった。試合前には、大きな応援の旗をスタンドに張る作業を手伝ってくれる子どもたちもいたりして、何やらホンワカとしたムードが。

 キックオフに合わせて本格的な応援が始まると「一緒に応援する」ことは、当然ながら難しくなってしまう。

 これって「海外試合アルアル」なんだよね。親子連れは、熱心なフロサポではないのだから致し方なし。珍しいものを見るような表情を浮かべる人もいた……。それでも「手拍子、お願いしますね!」と優しく、ソフトに引きずり込んでいく。

 そして手拍子だけでなく、プレーに一喜一憂してくれるようになるともぅ~嬉しくて嬉しくて「これこそがサッカーの醍醐味」なんて思っちゃった。

■ダミアンの優しさに涙

 JBでACLを戦うフロンターレをサポートしながら「いろんな応援の仕方があるんだなぁ~」って思った。

 そもそもワタシ、スタジアムに足を踏み入れるようになった頃は「熱烈応援している人って怖そうかも!」「いろんな小難しいルールとかあるんでしょ?」なんて先入観があり、なかなか輪の中に入っていけなかったんだ。

「コアサポさん、別世界に生きてる人なんだ」って思っていたし(笑い)。

 それがタオマフ(タオルマフラー)購入から始めて「結構、高いよね……」なんて言いながらユニを買い求め、そして手拍子に参加するようになり、いつしかタオマフをブンブン振り回すようになっていった。

「応援のコールやチャントなんて絶対にできない!」「あんな大きな声で叫んだり出来ない!」と言い張っていたワタシなんて完全に過去の人。

 JB滞在で声を出せる応援の喜びを改めて実感しながら、一人でも多くの人に「サポーターであることの幸せ」を味わって欲しいと思った。

 あっ!とっても嬉しかったことが!

 ダミアンが、バス到着時に選手たちをコールで迎えるワタシたちの光景を動画で撮り、それをインスタにあげてくれたんだ。もうサポーター冥利に尽きるって言うか、ダミアンの優しさ、気配りが感じられ、あの優しい笑顔に涙モン!

 そんなグループステージ最終6試合目の広州戦でした。

■必ずACL王者になるぞ!

 大事な事を書き忘れるところでしたーー。

 我らが川崎フロンターレは3勝2分1敗・勝ち点11ながら、中国・上海海港FCのACL出場辞退による変則ルールのため、グループステージ敗退となってしまいました(涙)。

 試合後の深夜、大きな花火が打ち上げられ、ホテルの窓から花火の光が差し込んできました。いつもより多かったみたい。多分、ラマダン明けが近いからかな。

 なんか「ACLよりもJリーグ優勝の方が優先でしょ」って声も聞こえてくるけど……現地を訪れて長く滞在して痛感したことがあります。

 日本という枠から飛び出してアジアの舞台での戦うこと、そこで勝つこと、勝てること……そこに必ず大事なことが、絶対に大事なことがあるんだよって。

 花火の音は、何度も何度も深夜のJBに響いていました。花火の数だけワタシは誓いました。

「これからもJリーグを制覇してACLにチャレンジして必ず王者になるぞ!」(終わり)

▽井上梨紗(いのうえ・りさ) 東京都出身のフリーランス・アナウンサー。高校時代からモデル活動を始め、大学時代に「東京アナウンスアカデミー」を修了。ラジオ、テレビ、各種イベントなどでMCやレポーターを務める。2003年から4年間の豪州在住経験を生かして留学関連アドバイザー、大好きなサッカー関連のセミナーやシンポジウムのMCなど活躍の場は多岐に渡る。

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