中日・大野は9回パーフェクトも「完全試合」逃す…プロ野球の投高打低が生んだ“悲劇”

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 苦笑いを浮かべ、自らの頭をポンと叩いた。

 6日の阪神戦で中日大野雄大(33)は、ひとりの走者も出さないまま延長十回のマウンドに上がった。2死後、佐藤輝明に中越え二塁打を打たれて、快挙が消滅。続く大山を二飛に打ち取ると、それまで淡々とアウトを重ねてきたエースの顔に初めて感情が表れた。

「9回をパーフェクトに抑えたわけですから、事実上の完全試合ですよ。奪三振は5ですが、球のキレと制球で勝負する大野らしい完璧なピッチングでした。サヨナラ勝ちで今季2勝目を手にしたのが救いとはいえ、0-0のまま延長戦に突入していなければ……と思わずにはいられません。阪神は阪神で9回を無失点に抑えた先発の青柳を打線が見殺しにした。大野が完全試合の快挙を逃したのも、投高打低が顕著な今季のプロ野球を象徴する“悲劇”と言えるのではないかと思います」(評論家の橋本清氏)

■問われる投手の記録の価値

 確かにそうだ。開幕してまだ35試合前後しか消化していない段階で、打率3割以上をマークしている打者はセ・パ合わせてわずかに11人。パ投手の防御率上位に0点台が1人、1点台が4人も並んでいるのは、裏を返せば各球団の貧打もその要因だ。チーム打率.208で12球団ワーストのオリックスを筆頭に、2割3分以下に沈むチームが阪神、日本ハム西武ロッテと実に5球団もあるのだ(6日現在)。

 今季は4月10日にロッテの佐々木朗希が28年ぶりの完全試合を達成。続く登板でも八回までひとりの走者も許さないまま降板した。30年近くも達成されなかった快挙が、この日の大野を含めて今季だけで2度も3度も実現しかけている。佐々木朗の完全投球から2日後には西武のスミスが七回まで無安打投球のまま降板。その翌日には西武の松本とロッテの美馬が六回までノーヒットノーランの投げ合いを演じ、「史上初の同時快挙達成」の期待まで抱かせた。

「こうなると、投手陣の快投はもちろん、相手の貧打にもクローズアップせざるを得ません」

 とは、前出の橋本氏。

 折しも今月3日に西日本スポーツが配信した、ソフトバンク千賀滉大によるコラムで、日本のエース自ら「3割打者が存在しない時代が来る」と書いている。投手の平均球速、変化球のスピードや変化量などあらゆる数値が上昇しているとして、それはさまざまな情報をトレーニングに生かす環境が整っているからだと分析。打つだけでなく、攻守の練習をこなさなければいけない打者とは進化の速度に差異が生じるという趣旨の内容だ。

 今後、ますます投高打低が進むとすれば、投手の記録の価値も問われることになる。

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