著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

聖地ウィンブルドンがロシアとベラルーシ選手の出場を禁止…ボイコットは起こるか

公開日: 更新日:

 過去にはボイコットに発展した例がある。1973年の今頃、デ杯代表を拒否したユーゴスラビア(当時)のニコラ・ピリッチに対し、国際テニス連盟が資格停止処分を下した。旗揚げ直後のATPは、アーサー・アッシュを先頭に81人がウィンブルドンをボイコット。ドローがめちゃくちゃになったおかげで日本選手が5人も本戦入りした。

 ただ、ウィンブルドンは公的機関ではなくAELTCという私的クラブ主催の大会で自治権を持つ。今世紀に入ってからツアーと歩調を合わせてきたものの、本来は“出たくなければご自由に”というスタンスだ。先週の選手委員会でナダル、フェデラーがツアーポイントを剥奪し公式戦と認めない方針を提案した(ジョコビッチは運営方針の違いから委員会を離れている)。

■1回戦負けでも賞金800万円

 こういった選手の権利を守る最終手段に対して、しかし、選手間では否定的意見が多い。ウィンブルドンは145年の歴史を誇るテニスの玉座、まして今年の賞金は14%増の総額3990万ポンド(約64億3700万円)で、優勝賞金が3億円、1回戦負けでも800万円、ポイント剥奪の効果は期待できない。男女とも新陳代謝が進み若手はポイントも欲しいだろうが……死者50万人ともいわれたイラク戦争時にこうした措置はなかった。モスクワ五輪のボイコットからほぼ半世紀。スポーツの脱政治などきれいごとに違いないだろうが、そう突き放してしまっては元も子もない。テニスのジレンマは続く。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾