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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

瀬古利彦の師・中村清の没40年に思う昭和のマラソン「キミ、馬も人も同じだよ」

公開日: 更新日:

 そもそも競馬記者で、中央競馬会の坂路トレーニングが話題になったそうだ。栗東だったか美浦の新設計画だったか、中村さんはこう言ったそうだ。

「キミ、馬も人も同じだよ」

 瀬古の絶頂期である。取り方によってその言葉は「瀬古も馬も同じだ」と聞こえたーーその時はよくわからなかったが、私は中村の言葉と石井君の顔をしばしば思い出す。

 日本のマラソンを飛躍させたのはニュージーランドの指導者アーサー・リディアードの理論だった。最初の東京五輪前、日本のマラソン陣はニュージーランドで合宿を組みリディアードの教えを受けた。寺沢徹、君原健二、円谷幸吉、中尾隆行……高橋進、中村清、帖佐寛章ら指導者も、ファルトレク練習(変化走)、50キロハイキングラン、ゴルフコースでの坂路練習などを学んだ。

 寺沢さんは生前、その時の様子をこう話していた。

「中村さんは丘の上で腕を組みじっと見ていました」

 走りの原資は筋肉だ。ただ、マラソンには持久走を完遂する意志が欠かせない。中村はニュージーランドの丘で「馬も人も同じ」と思い至り、「が、馬と人は違う」と考えあぐねたのではなかったか。瀬古を早稲田からエスビー食品に引き連れた1980年代、中村は毎年のようにニュージーランドで合宿を組んだ。

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