長嶋茂雄さんは松井秀喜の背もたれをガーンと蹴っ飛ばし、「巨人の4番道」を説いていた
「あしたのメンバーをいじって考えてきてくれ。私も考えるから」
「分かりました」
長嶋監督がチーム内にピリピリムードを出すための演技だった。ベンチ裏ではステテコ姿でマッサージをされているのに、メンバー表を見せて「よし、これでいいだろう」と一度ユニホームを着るとスイッチが入る。監督室のドアを開けて「頑張りますよ~。きょうは頑張りましょうね~」と出てきた時にはすっかり「長嶋監督」になっている。
ふがいない試合後、コーチや選手に怒ることはあっても、根に持つことはない。ものの5分や10分で切り替わっている。さっさと身支度を済ませると、パリッとしたジャケットを着て「またあした~」と、さっそうと帰っていく。
1993年オフに広島から巨人のコーチになる際、山本浩二さんに「長嶋さんに『ちゃん』づけで呼ばれるようになったら本物だ。『うっちゃん』と言われるように頑張ってみな」と送り出された。長嶋監督はある時から私のことを「うっちゃん」と呼んでくれるようになった。
長嶋監督の後を継ぎ、現在は第3次政権に入っている原辰徳監督は、ミスターとは違ったタイプの指揮官である。