危うい均衡で成り立っているドラフト制度の実情...今後は制度設計の見直しを迫られる局面へ
出来高についてはケース・バイ・ケースで、指名順位が低い社会人選手には、契約金を抑える代わりに出来高を厚く設定することがあります。「3年以内に一軍登録されたら1000万円」など、比較的ハードルの低い条件が多く、育成選手の場合は「支配下登録で2000万円」といった例もあります。
サイドレターは、逆指名制度が存在した06年までは、日常的に交わされていました。引退後のコーチ手形や終身雇用の約束、さらには父親への就職斡旋など、いまでは考えにくい“裏約定”もあった。現在は制度が整い、公に許されていませんが、非公式の付帯条件としてポスティングの便宜や、入団後のライセンスビジネスにおける選手側の取り分調整などが話題になることもあります。
ドラフト制度は、実は微妙な均衡の上に成り立っています。契約金や年俸の「上限」は法令で定められたものではなく、あくまで12球団間の申し合わせにすぎません。野球協約に明文化すれば独占禁止法上の問題を指摘されるおそれがあるため、紳士協定として運用されているのが実情です。また、「希望球団に行けない」という仕組み自体が、憲法で保障される職業選択の自由との整合性を問われる余地を残しており、国会で議論されたこともあります。