危うい均衡で成り立っているドラフト制度の実情...今後は制度設計の見直しを迫られる局面へ
長く「野球産業の発展のための知恵」として機能してきたこの制度も、いまや外部環境が一変しています。今年1月、桐朋高の森井翔太郎がアスレチックスとマイナー契約を結びました。契約金は約2億3000万円。日本では破格に見えますが、メジャーでは3巡目に相当する水準に過ぎません。経営難にあえぐアスレチックスですら、その額を提示できるのです。かつては「契約金ならNPB」といわれた時代もありました。1987年、ヤクルトが長嶋一茂を1位指名したときの契約金は8000万円。同年、マリナーズ入りしたケン・グリフィー・ジュニアは当時のレートで1760万円──それも今は昔。
この契約金の格差と、日本選手のレベルの高さゆえに、優秀なアマ選手が日米を天秤にかける時代になりました。07年に逆指名が廃止になって以降、長らく静穏だったドラフト制度も、国際化や法制度の変化を背景に、今後は制度設計の見直しを迫られる局面に入るかもしれません。