「戦う女、戦えない女」林田敏子著
■オンナと戦争
世間はあまり騒がないが、安倍政権がひそかにもくろむ右傾化策のひとつが女性自衛官の前線配置。まさに“国民総動員化”の道が現実になりつつあるのだ。
■女性を戦場に駆り出した歴史を検証
第1次世界大戦は世界の運命を変えた戦争だったといわれる。ヨーロッパの没落はこれで決定的になり、アメリカが躍進。進歩した戦争のテクノロジーは人間の予想を超える破壊力を発揮し、トラウマが社会に巣くうことになった。
成人男子を対象とする徴兵制が世界的に導入されたのもこの大戦。戦地に行った男たちの穴を埋めるために、工場や職場では女たちが動員をかけられた。まさに国民総動員制度は第1次大戦で定着したのである。この歴史的な体験をイギリス女性史とジェンダー論の観点から問い直すのが本書だ。
やぼったい軍服が国民の間で熱狂的な人気を呼ぶ「カーキ・フィーバー」の話題から始まり、国家危急のときに身を奉じる尊さを説く情緒的な道徳論が女性たちの心理をも巻き込んでいく。大英帝国の誇りと女性の気品が一体化され、参政権運動は統制を乱すものとして休止。代わりに農村から警察、野戦病院、さらに戦場へ赴く部隊にまで女性たちが補助要員として駆り出されていく。