「嘘と絶望の生命科学」榎木英介著

公開日: 更新日:

 STAP細胞をめぐる騒動の本質はどこにあったのか。榎木英介著「嘘と絶望の生命科学」(文藝春秋 800円)では、かつて生命科学の一端に身を置いた病理医が、研究不正の種が生み出される現場の実態を明らかにしている。

 再生医療や難病治療などさまざまな可能性を秘める生命科学。そのため、政府の科学技術政策の重点領域とされ、他の分野より多額の予算が投じられている。しかしそれは、成果も厳しく要求されるということだ。

 研究者にとっての成果とは、たくさんの論文を書くこと。それも、第三者に審査される論文誌に掲載されてナンボの世界だ。これが、3大誌と呼ばれる「セル」「ネイチャー」「サイエンス」であれば、研究者としての株は一気にあがり、研究費の心配もせずにすむようになる。

 しかし、論文のためには膨大な時間を実験に充てなければならない。そして、実験には人手がいる。ここでかり出されるのが、有期雇用の研究者であるポストドクターだ。生命科学の世界では、彼らを「ピペド」と呼ぶ。小保方氏も使っていた“ピペット”と呼ばれる細長い器具を使い、朝から晩まで単調な実験に従事させられる。その姿からピペット奴隷、略してピペドと呼ばれるわけだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  3. 3

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    やす子の毒舌芸またもや炎上のナゼ…「だからデビューできない」執拗な“イジり”に猪狩蒼弥のファン激怒

  1. 6

    羽鳥慎一アナが「好きな男性アナランキング2025」首位陥落で3位に…1強時代からピークアウトの業界評

  2. 7

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 8

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  4. 9

    渡部建「多目的トイレ不倫」謝罪会見から5年でも続く「許してもらえないキャラ」…脱皮のタイミングは佐々木希が握る

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」