「嘘と絶望の生命科学」榎木英介著

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 STAP細胞をめぐる騒動の本質はどこにあったのか。榎木英介著「嘘と絶望の生命科学」(文藝春秋 800円)では、かつて生命科学の一端に身を置いた病理医が、研究不正の種が生み出される現場の実態を明らかにしている。

 再生医療や難病治療などさまざまな可能性を秘める生命科学。そのため、政府の科学技術政策の重点領域とされ、他の分野より多額の予算が投じられている。しかしそれは、成果も厳しく要求されるということだ。

 研究者にとっての成果とは、たくさんの論文を書くこと。それも、第三者に審査される論文誌に掲載されてナンボの世界だ。これが、3大誌と呼ばれる「セル」「ネイチャー」「サイエンス」であれば、研究者としての株は一気にあがり、研究費の心配もせずにすむようになる。

 しかし、論文のためには膨大な時間を実験に充てなければならない。そして、実験には人手がいる。ここでかり出されるのが、有期雇用の研究者であるポストドクターだ。生命科学の世界では、彼らを「ピペド」と呼ぶ。小保方氏も使っていた“ピペット”と呼ばれる細長い器具を使い、朝から晩まで単調な実験に従事させられる。その姿からピペット奴隷、略してピペドと呼ばれるわけだ。

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