「断絶の都市センダイ」今野晴貴著

公開日: 更新日:

 東日本大震災後に行われた復興支援は、被災者の生活再建への役割を本当に果たしているのか。本書は、NPO法人POSSE代表である著者が、仙台で支援を行うなかで見えてきた被災地の実態を赤裸々に暴いた一冊だ。

 生活基盤が奪われた被災者は、「絆」だの「がんばろう」だのと鼓舞されながら、無理な条件での自立が求められた。そして今や自立できない者は努力しないと非難され、被災者同士ですら分断されている。復興の名のもとに行われたのは、復興予算の被災地外への流用、単発イベントを実施して帰っていくイベント型支援、生活できない低条件の雇用の増加、助成金を食い物にする偽善ビジネスの横行など、支援とはかけ離れたものばかりだ。

 これらは、働き手にむちゃなノルマを課して、うつ病になるまで酷使した揚げ句、脱落者を「甘え」と非難するブラック企業と同じ構図だと指摘。ブラック国家と成り果てた日本のおぞましい実態が被災地から見えてくる。
(朝日新聞出版 1500円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    彬子さま三笠宮家“新当主”で…麻生太郎氏が気を揉む実妹・信子さま「母娘の断絶」と「女性宮家問題」

  4. 4

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  5. 5

    ヤクルト池山新監督の「意外な評判」 二軍を率いて最下位、その手腕を不安視する声が少なくないが…

  1. 6

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  2. 7

    違法薬物で逮捕された元NHKアナ塚本堅一さんは、依存症予防教育アドバイザーとして再出発していた

  3. 8

    大麻所持の清水尋也、保釈後も広がる波紋…水面下で進む"芋づる式逮捕"に芸能界は戦々恐々

  4. 9

    “行間”を深読みできない人が急増中…「無言の帰宅」の意味、なぜ分からないのか

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発