人気シリーズの最新作を上梓した大沢在昌氏に聞く

公開日: 更新日:

 かつては、カタギが暴力団と関われば骨までしゃぶられるのが常だった。しかし今では、カタギと組まなければ暴力団のシノギは成り立たなくなっている。暴力団よりタチの悪いカタギが、暴力団より優位に立つという奇妙な逆転現象が起きているのだ。

「とはいえ、暴力団が消えてなくなったわけではありません。司法の圧力に耐えた暴力団が“少数精鋭”となって強固な組織力を持ち、一般企業よりも巨額の資金を動かし始めている。組織犯罪処罰法や暴力団排除条例は、善と悪の境界線をどんどん曖昧にしていくでしょうね」

 捜査1課の谷神とコンビを組んで捜査を進めていく佐江は、やがて日本最大の広域暴力団である高河連合の最高幹部、延井が仕掛けた「Kプロジェクト」に行き当たる。延井は、何年もかけて歌舞伎町のオレンヂタウンの地上げを行い、ある目的のために「Kプロジェクト」を強硬に進めていた。そしてこれを邪魔する者は、連合が雇ったプロの殺し屋によって次々と排除されていたのだ。

「目に見える雑草だけを刈り取り、土の中深くに潜り込んだ根っこは見て見ぬふりをするかのような暴力団がらみの現状に、警察内部でも不穏な動きが出てくる。これに対し、佐江はどう向き合うのか。実は今作をもって、狩人シリーズは完結を試みています。佐江のことも、彼の死を視野に入れながら書き進めました。見てくれは冴えない不器用な男ですが、反骨精神の塊で絶対に敵にはしたくない。友達だったら非常に面倒くさそうなヤツですが、私自身も彼に愛着がありましたから、どのような結末を迎えるのか楽しみに読んでいただければ幸いです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」